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「はあ? なんでそんなことになったんだ」
ココさんは今、床に座りながら誰かと電話をしている。床の上には、レシピ本がいくつか並んでいた。今日は市場に行く約束をしていたから、食材を買いにいくにあたって何を食べたいのか、決めている最中だった。と、言っても殆ど僕の食べたいものが採用されているんだけども。
僕はココさんの傍に近寄って、腿に頬を摺り寄せてみた。ぬくぬくとしていた僕の頭上から聞こえてきた声は、そんなような声だった。携帯を耳に当てたココさんがちょっとうんざりした顔をしているから、電話の相手は多分、トリコさんだと思う。
じっとココさんを見上げると、視線に気付いたココさんの眉間から僅かに皺が消えた。大きな手に頭を撫でられて、心地良さに僕は目を細めた。
「無理に決まってるだろ、お前、家に小松君がいるの知ってるだろ?」
突然名前を出されて、僕はぴくりと耳をそばだてた。ココさんの指先が、顎をくすぐる。くすぐったさと気持ちよさの中間と共に、あまりの気持ち良さに欠伸が漏れた。
頭上でココさんが、小さく笑う声が聞こえてくる。
「ん? あぁ、違うよ。え? うるさいな、しょうがないだろ。大きくなったとはいえ、まだ小さいし」
顎をくすぐっていたココさんが、指先で僕の頬を突く。むに、と頬を摘まれて、心地良い眠気がどこかへと飛んでいってしまった。
「そりゃそうだけど……あれは集めるの大変だし、ちょっと危険だから、あまり近付けさせたくない」
それが僕の話をしていることに気付くのは、それだけで十分だった。顔をあげて、僕はじっとココさんを見た。
大丈夫だよ。と、安心させるようにココさんは微笑んで、僕の頭を撫でてくれる。
「そもそもなんでそれが必要なんだ?」
耳に当てた受話器から聞こえていた微かな声が、更に小さい音になった。時間が経つにつれて、ココさんの顔が険しいものへと変わっていく。
「お前ら、馬鹿なの? なんなの? 自業自得だろ、それ……おい、待て。なんで僕らまで駆り出される話に発展したんだ」
ココさんの僕の頭を撫でていた手が止まった。頭を押し付けると、慌てたようにココさんの手が僕の頭を撫で始める。それでも、眉間の皺は取れなかった。
「……覚えてろよ、トリコ。それからお前、小松君に謝れよ。今日は小松君と出掛ける予定だったんだから。じゃなきゃ、僕が特別に調合した飲み物でも持って行くからな。地獄の苦しみを味あわせてやる」
なんとも物騒な言葉を投げて、ココさんはそれからいくつか会話をすると、通話を一方的に切った。盛大な溜息を吐いて、ココさんは携帯を机の上に放り投げる。
「大丈夫ですか?」
「……うん、あんまり大丈夫じゃないや」
珍しく弱気な言葉を吐くココさんが心配になって覗き込むと、ココさんはちょっと心配そうな顔をして僕を膝の上に乗せる。
「トリコ達が馬鹿をやってね。生徒全員、緊急招集されたみたい。どんなことがあっても夜には必ず帰ってくるようにするけど……ごめん、市場には行けなくなっちゃった」
僕はぺたんと耳を倒した。残念な気持ちは隠せそうにない。
「……しょうがないです。また別の機会に連れてってくれますか?」
「勿論だよ、埋め合わせは必ずする。小松君の好きなもの、一杯食べようね」
僕はココさんの言葉に、ちょとだけ浮上して頷いた。
「じゃあ、いいです。今日はご飯はどうしますか?」
「お昼はいらない。夜は家で食べるつもりだけど……どうなるかわからないから、寝てていいよ」
僕はまたこくんと頷いた。寂しいけど、我侭は言えない。ココさんは心配そうな表情で僕を膝の上から降ろすと、僕の額に柔らかい口付けをくれた。
「ごめんね」
「大丈夫です。いってらっしゃい!」
笑って、僕はココさんを見送った。心配そうに振り返りながら離れていくココさんの後姿を見つめながら、僕はどことなく漂う不安に胸元をぎゅっと握り締めた。
ココさんは今、床に座りながら誰かと電話をしている。床の上には、レシピ本がいくつか並んでいた。今日は市場に行く約束をしていたから、食材を買いにいくにあたって何を食べたいのか、決めている最中だった。と、言っても殆ど僕の食べたいものが採用されているんだけども。
僕はココさんの傍に近寄って、腿に頬を摺り寄せてみた。ぬくぬくとしていた僕の頭上から聞こえてきた声は、そんなような声だった。携帯を耳に当てたココさんがちょっとうんざりした顔をしているから、電話の相手は多分、トリコさんだと思う。
じっとココさんを見上げると、視線に気付いたココさんの眉間から僅かに皺が消えた。大きな手に頭を撫でられて、心地良さに僕は目を細めた。
「無理に決まってるだろ、お前、家に小松君がいるの知ってるだろ?」
突然名前を出されて、僕はぴくりと耳をそばだてた。ココさんの指先が、顎をくすぐる。くすぐったさと気持ちよさの中間と共に、あまりの気持ち良さに欠伸が漏れた。
頭上でココさんが、小さく笑う声が聞こえてくる。
「ん? あぁ、違うよ。え? うるさいな、しょうがないだろ。大きくなったとはいえ、まだ小さいし」
顎をくすぐっていたココさんが、指先で僕の頬を突く。むに、と頬を摘まれて、心地良い眠気がどこかへと飛んでいってしまった。
「そりゃそうだけど……あれは集めるの大変だし、ちょっと危険だから、あまり近付けさせたくない」
それが僕の話をしていることに気付くのは、それだけで十分だった。顔をあげて、僕はじっとココさんを見た。
大丈夫だよ。と、安心させるようにココさんは微笑んで、僕の頭を撫でてくれる。
「そもそもなんでそれが必要なんだ?」
耳に当てた受話器から聞こえていた微かな声が、更に小さい音になった。時間が経つにつれて、ココさんの顔が険しいものへと変わっていく。
「お前ら、馬鹿なの? なんなの? 自業自得だろ、それ……おい、待て。なんで僕らまで駆り出される話に発展したんだ」
ココさんの僕の頭を撫でていた手が止まった。頭を押し付けると、慌てたようにココさんの手が僕の頭を撫で始める。それでも、眉間の皺は取れなかった。
「……覚えてろよ、トリコ。それからお前、小松君に謝れよ。今日は小松君と出掛ける予定だったんだから。じゃなきゃ、僕が特別に調合した飲み物でも持って行くからな。地獄の苦しみを味あわせてやる」
なんとも物騒な言葉を投げて、ココさんはそれからいくつか会話をすると、通話を一方的に切った。盛大な溜息を吐いて、ココさんは携帯を机の上に放り投げる。
「大丈夫ですか?」
「……うん、あんまり大丈夫じゃないや」
珍しく弱気な言葉を吐くココさんが心配になって覗き込むと、ココさんはちょっと心配そうな顔をして僕を膝の上に乗せる。
「トリコ達が馬鹿をやってね。生徒全員、緊急招集されたみたい。どんなことがあっても夜には必ず帰ってくるようにするけど……ごめん、市場には行けなくなっちゃった」
僕はぺたんと耳を倒した。残念な気持ちは隠せそうにない。
「……しょうがないです。また別の機会に連れてってくれますか?」
「勿論だよ、埋め合わせは必ずする。小松君の好きなもの、一杯食べようね」
僕はココさんの言葉に、ちょとだけ浮上して頷いた。
「じゃあ、いいです。今日はご飯はどうしますか?」
「お昼はいらない。夜は家で食べるつもりだけど……どうなるかわからないから、寝てていいよ」
僕はまたこくんと頷いた。寂しいけど、我侭は言えない。ココさんは心配そうな表情で僕を膝の上から降ろすと、僕の額に柔らかい口付けをくれた。
「ごめんね」
「大丈夫です。いってらっしゃい!」
笑って、僕はココさんを見送った。心配そうに振り返りながら離れていくココさんの後姿を見つめながら、僕はどことなく漂う不安に胸元をぎゅっと握り締めた。
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