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「わあ、これがココさんの騎獣ですか?!」
「うん、そうだよ。キッスっていうんだ」
ココは言いながら、その黒い毛並みを撫でた。クルルとココに答えるように静かに鳴いたカラスのような鳥は、小松を見つけると首を傾げる。
「彼は小松君だよ。泰の麒麟なんだ、害はないから安心してね」
キッスと呼ばれたカラスはその丸い硝子玉のような目に小松を映し出す。
「触っても大丈夫でしょうか?」
「勿論! 小松君なら大丈夫だよ。キッス」
ココは笑って、小松に道を開ける。ココがキッスに声を掛ければ、キッスは体を丸めてくれる。小松が小さな手を伸ばすと、少しゴワゴワとした毛並みが小松の掌をくすぐった。嘴が小松の目の前に降りてきた。そこをくすぐってやれば、気持ち良さそうにキッスの目が細められる。擦り寄るようなキッスの仕草に、小松は目元を和らげた。
「凄い可愛いですね、キッス!」
「あぁ、子供の頃から一緒だったんだ、人には慣れてる」
ココは小松の横に立って、キッスの毛並みをどこか嬉しそう撫でていく。その指先を見つめ、小松は僅かに俯いた。トリコもココは、小松には優しかった。こんな人がどうして自分に、と、小松は常日頃思ってはいたのだが、その疑問にも既に答えは出ている。
僕が麒麟だから……。
小松はまた泣きそうになって、目をぎゅっと一度閉じる。考えても仕様がないことだということは、小松にもわかっていた。けれど、ココの発した言葉は思いのほか深く、小松に棘となって突き刺さっていた。国にとって、なくてはならない存在の麒麟。民は当然、麒麟に期待をしている。素晴らしい王を選ぶ麒麟を。だから皆小松に優しいし、小松を丁重に扱うのだ。小松はそこまで考えて、唇を噛む。自分が麒麟でなければ、きっと見向きもされなかった世界。だから、つまり、やっぱり小松の居場所はどこにもないのだ。
小松は俯く。ココが何かを話しているようだが、耳に入らない。重圧のような何かを感じて、ずっしりと体が重くなったように感じられた。
「わ!?」
そんな小松の顔に押し付けられる硬い何か。驚いて身を引けば、それはキッスの嘴だった。丸い瞳が、小松を心配するように覗き込んでくる。
心配してくれているの?
小松は密かに、心の中で問い掛けた。甘えるように嘴を摺り寄せてくるキッスに小さく笑いながら、小松は少しだけ浮上した。
「驚いたな。キッスが僕以外の、しかも初対面の人に甘えるなんて」
ココが少し驚いたように目を見開いていた。小松はキッスの嘴を掻いてやりながらも、苦笑を浮かべる。キッスが甘えているわけではない。これは多分、キッスが自分を甘やかしてくれたのだ。
麒麟だから?
小松は首を傾げる。けれどキッスがそれに答えてくれる筈もなかった。
「うん、そうだよ。キッスっていうんだ」
ココは言いながら、その黒い毛並みを撫でた。クルルとココに答えるように静かに鳴いたカラスのような鳥は、小松を見つけると首を傾げる。
「彼は小松君だよ。泰の麒麟なんだ、害はないから安心してね」
キッスと呼ばれたカラスはその丸い硝子玉のような目に小松を映し出す。
「触っても大丈夫でしょうか?」
「勿論! 小松君なら大丈夫だよ。キッス」
ココは笑って、小松に道を開ける。ココがキッスに声を掛ければ、キッスは体を丸めてくれる。小松が小さな手を伸ばすと、少しゴワゴワとした毛並みが小松の掌をくすぐった。嘴が小松の目の前に降りてきた。そこをくすぐってやれば、気持ち良さそうにキッスの目が細められる。擦り寄るようなキッスの仕草に、小松は目元を和らげた。
「凄い可愛いですね、キッス!」
「あぁ、子供の頃から一緒だったんだ、人には慣れてる」
ココは小松の横に立って、キッスの毛並みをどこか嬉しそう撫でていく。その指先を見つめ、小松は僅かに俯いた。トリコもココは、小松には優しかった。こんな人がどうして自分に、と、小松は常日頃思ってはいたのだが、その疑問にも既に答えは出ている。
僕が麒麟だから……。
小松はまた泣きそうになって、目をぎゅっと一度閉じる。考えても仕様がないことだということは、小松にもわかっていた。けれど、ココの発した言葉は思いのほか深く、小松に棘となって突き刺さっていた。国にとって、なくてはならない存在の麒麟。民は当然、麒麟に期待をしている。素晴らしい王を選ぶ麒麟を。だから皆小松に優しいし、小松を丁重に扱うのだ。小松はそこまで考えて、唇を噛む。自分が麒麟でなければ、きっと見向きもされなかった世界。だから、つまり、やっぱり小松の居場所はどこにもないのだ。
小松は俯く。ココが何かを話しているようだが、耳に入らない。重圧のような何かを感じて、ずっしりと体が重くなったように感じられた。
「わ!?」
そんな小松の顔に押し付けられる硬い何か。驚いて身を引けば、それはキッスの嘴だった。丸い瞳が、小松を心配するように覗き込んでくる。
心配してくれているの?
小松は密かに、心の中で問い掛けた。甘えるように嘴を摺り寄せてくるキッスに小さく笑いながら、小松は少しだけ浮上した。
「驚いたな。キッスが僕以外の、しかも初対面の人に甘えるなんて」
ココが少し驚いたように目を見開いていた。小松はキッスの嘴を掻いてやりながらも、苦笑を浮かべる。キッスが甘えているわけではない。これは多分、キッスが自分を甘やかしてくれたのだ。
麒麟だから?
小松は首を傾げる。けれどキッスがそれに答えてくれる筈もなかった。
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