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萌えのままになんにも考えずに書いていくから、陰陽師は色々と設定があっちこっちいきそ、う…!

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 小松君が僕らのために頑張っていたのは知っている。
 朝は早くて、帰りも遅い。最後にまったりと縁側でお茶を飲んだのはいつだろうと、そんなことを考えるくらいには小松君は多分、休んでいなかった。
 そんな彼が、体調を崩すのも仕方がないことだと、僕は思う。溜息を吐いた僕を見て、小松君が布団の中で苦笑を浮かべた。
「すいません……」
 その溜息を、小松君は僕の迷惑を掛けたせいだからと勘違いしたようだった。僕は羽を仕舞うと、普通の人間に化けて小松君の横に座る。
「……ココさん?」
「無茶のしすぎ」
「うっ、」
「夜は陰陽師、昼間は料理人? 結構なことだけど、ちょっと働きすぎだよ」
「だ、だって……あだっ!」
 僕は小松君の額を、ぴんと人差し指で弾いた。紅くなったそこを押さえて、小松君はどこかムッとしたように僕を見る。
「陰陽師は弱ってはいけない」
 ぐっと目を細めると、文句を言おうとした小松君が言葉を噤む。
「意味、わかるよね?」
 僕がその額に手を翳すと、小松君はどこか悔しそうに唇を噛んだ。
 弱れば、狙われる。僕がいるから、まだ低俗なやつらはやってはこない。だけど、これが強い鬼や妖なら、どうなるかわからない。そのことを、小松君も理解はしている筈だった。
「ごめんなさい……」
「本当は僕すら入れない結界を張るのがいいとは思うけど、ね」
 僕を御したことすらある小松君だ。本当はそういった結界も、張れるには張れるのだろう。だけど、小松君はそうしなかった。小松君はここら辺に住んでいる、害意のない妖には優しかった。
 彼を好いている妖は沢山いるだろう。
 だけど……。
 僕はその気配に、ふと顔をあげる。
「ココさん?」
「ん。ちょっと、出てくるよ」
 僕は指笛を鳴らす。すぐに近くの森から、少し大きめの、黒い烏が飛び出してくる。
「この子、は?」
「前に言っただろう? キッスだよ」
 僕はキッスを腕に乗せて、そっと小松君の枕元へと差し出す。小松君は僕の言葉に、目を細めてキッスを見つめた。
「初めまして。キッスの話はいつもココさんから聞いているよ」
 キッスはくるると鳴きながらベッドの傍らに降りた。小松君の状態を見て、自分がどういった役割で呼ばれたのか、頭の良い友人は理解したようだ。紅い瞳が、僕をじっと見つめている。
「……頼んだよ」
「ココさん、あの、」
「何かあったら、キッスに言ってね」
「待って下さい!」
 小松君の言葉に耳を貸さず、僕は小松君に背中を向ける。
「ちょっと用事を思い出したんだ、すぐに戻るよ」
「……信じて、いいんですか?」
「妖を信じてくれるのは、君くらいだよ」
 僕は笑って、小松君の額に口付けを送り、僕はその瞼に手を翳す。
「……少し、おやすみ」
 力を込めれば、僅かな抵抗の後、小松君はすぐに眠りに落ちた。やっぱり、弱っているのは否めない。
「さて、行って来るね、キッス」
 じっと、キッスが訴えかけるような視線を投げ掛けてくる。僕は手を振って、その視線を遮った。
「ちょっと悪い鬼を追っ払ってくるだけだよ」
 小松君の目が覚める前には、戻ってくるさ。
 それだけを呟いて、僕は立ち上がった。襖を閉める間際、小松君の顔を見る。穏やかに眠る顔に微笑み、僕はゆっくりと襖を閉めた。
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