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考えていた設定を大して煉りもせず、そのまま悶えたままに何も考えず突っ込んだ話がこちら。
超特急で、しかも一話で終わらせたかったからすんごい色々詰め込んだ挙句に色々ぐちゃぐちゃ。
しかも珍しくお酒飲みながら書いていたからいろいろぐちゃぐちゃになってそうですツマミがおいしい←
色々酷くても許せる方のみどうぞ。
しかもこれ、手ブロで指定されたイラストバトンをこんな所で消化するなって話ですよね。
でも仕方ないんだ……考えてたらなんか色々……w
手ブロ絵はそのうち!(`・ω・´)
超特急で、しかも一話で終わらせたかったからすんごい色々詰め込んだ挙句に色々ぐちゃぐちゃ。
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でも仕方ないんだ……考えてたらなんか色々……w
手ブロ絵はそのうち!(`・ω・´)
【花魁小松君】
花街と呼ばれる所がある。そこは数々の美食屋が集まる場所。
密かに行われる色事と、提供される素晴らしい食事、それから情報収集。美食屋達にとって、そこは目で、身で、舌で、肌で味わう、一時の宿ともなるのが、食郭と呼ばれる場所だった。
名立たる食通達は名を連ねて花街へと足を運び、少しでも美味しい食事を食べたい一心で食郭へ大枚を叩く時代。
食が重視されるこの時代で、当然花街でも重視されるのは「食」であった。特に、この街で一番重視されるのは料理人である。花街の食郭には、小さな頃からそういった食に対して、厳しい訓練と教養を積み重ねてきた者達がいた。これを人々は「花魁」と呼んだ。
花魁は男女問わず、その手先に何かしらの食に関する技を身につけている。客はそれを求めて、食郭へと足を運んぶ。誰がそうしたわけでもなかったが、殆どの男女が「美」も兼ね備えていたために、色事目当てに通う者も多かった。
そんな宿の一つに、具瑠女茶屋と呼ばれる場所が一つ。そこは食通達の間でも、一目置かれている花魁がいる。その名を小松と呼んだ。
美味な食事を提供してくれるという噂の花魁は、しかし誰にも顔を見せたことがないということでも有名だった。
その花魁は誰が出向こうとも、御簾を挟んでしか会話をしない。故に、誰もそういった行為に及んだこともなければ、顔を見た者もいない。かろうじて、男であろうという推測が街を飛び交ってはいたが、それも奈何せん推測に過ぎない。これも人によってはその花魁を女だと断定する者もあれば、男だと言う者もいて、様々だった。
そんな不可解な様が人々の噂に尾ひれをつけ、「絶世の美男に違いない」という者もあれば「顔は焼けてただれてしまっているのだろう」と、そう噂する者もあり、謎に包まれた花魁は益々人々の心を魅了した。
そんな具瑠女茶屋に、一人の男が入り込んだ。その男はとても体躯の良い体をしていて、出てきた店の主人も思わず見上げてしまう程の長身だった。髪は黒く、正しく美男と呼ばれるに相応しい顔の、美しい男だった。
男は通された間でそれが来るのを待った。出された食事を大して口に運ぶこともなく、男は何とはなし部屋を見渡した。当然のように、生活感は微塵にも感じられない。
「お待たせいたしました」
奥の部屋、御簾のその先に人影が薄らと見える。小柄なその体躯からは性別は判断出来かねるか、男はそこにいるのが男だと知っていた。
「久々だね、小松君。僕のこと、覚えてる?」
「……っ! ココ、さん?」
「うん、僕だよ」
御簾の先で、男はじっと自分を見つめる視線を感じた。ココは柔らかな声で、御簾の先にいるその人へと声を掛けた。
「随分と探した」
ココは、そう言ってにこりと御簾の先に笑い掛けた。
御簾の先にいる小松は、僅かに困惑したような雰囲気を漂わせた。ココは徐に立ち上がると、ゆっくりと御簾の傍近くへと寄る。
「ココさ、」
「本当に、苦労したよ」
御簾の前まできたココは、緊張したようにそこで立ち止まった。二人の間にあるのは、頼りない壁が一つあるだけ。ココは、そこにゆっくりと手を掛けた。
「……開けても、いいかい?」
小松は答えなかった。ココはそれを了承と受け取り、そっと御簾を押し上げる。僅かな明かりに照れされて、その小柄な人の姿が露わになる。そこにいるのは、ココが探し求めてやまない小松の姿だった。
「小松君、やっと、見つけた……」
「本当に、ココさん……ですか?」
小松の唇には、薄らと紅が惹かれているようだった。上等の着物を着て座っている姿は、正しく牡丹のようにココには思えた。
ココは小松の目の前で膝をつくと、そっとその丸い頬に指先を這わす。
「あぁ、信じてくれ。間違いなく、君の知っているココだよ。ほら、覚えてる? 二人で海蛍を見に、海岸まで行ったりしたじゃないか。夏には祭りに行ったよね、君ってば本当に食いしん坊で……」
いつになく饒舌に喋ったココは、そこで口を噤んだ。その瞳に、僅かに苦痛の色が浮かぶ。
「ずっとあんな日々が続くと、信じて疑ってなかった」
ココは小松の華奢とも言える肩を優しく撫でた。上等な着物の肌触りは、けれどココの心をちっとも浮き上がらせてはくれなかった。
「君は一流の料理人になって、僕は一流の美食屋になって、二人で食材を取って、美味しい食事をするのが夢だと」
ココは不意に、そこで小松の目に涙が浮かんでいるのに気がついた。指先でその雫を拭ってやれば、小松の頬が掌に押し当てられる。
「遅くなって、すまない。まだ僕も未熟だったとはいえ、守ると誓ったのに……ごめん」
小松は静かに首を振る。その瞳から、ぽろりと涙が零れ落ちていった。
「こうして来てくれただけで、救われます。どうやって、ここに?」
「父に罪のない嘘をいくつか。父は情報には強いからね」
ココはそう言って、人の悪い笑みをそこに浮かべた。小さな頃から変わらないものをそこに見た気がして、小松は瞳を懐かしさに僅かに細めた。
「やっぱりあの時、君をあの家から攫っておけばよかった。まさか君をこんな所に……! 何か酷いことをされたりはしなかった?」
「いいえ、料理はいつでも僕の味方でしたし……ここのご主人も本当に良い方で、僕が料理を出来ると知ってからは、色々と取り計らってくれて」
色事についても、出来ないようにこうして取り計らってくれたんです。まあ、この顔だからでしょうけど。
そんな小松の言葉に、ココはほうと息を吐いた。不幸中の幸いと言った所だろうか。
「その噂については、聞いているよ。花街は君の噂で持ち切りだったからね」
ココは小松の頭を撫でて、ゆっくりとその胸にしまい込んだ。その小さな体を、香りを、堪能するようにその肩口に顔を埋める。小松も抵抗することなく、ココの胸に頬を擦り寄せる。
「……小松君、」
その声音に、小松の脳裏にずっと胸に仕舞い続けてきた想いが、思い出が、一挙に溢れ出てくるようだった。詰まりそうになる想いを吐き出し、小松はココを濡れた眼差しで見つめる。
「ずっと言いたかった……僕は、あの時から、ずっと、君が好きだった」
「ココ、さん」
真剣な眼差しで、表情で、ココは告げる。その真っ直ぐな眼差しに、声に、小松は息を詰めた。ココの唇が近付いてくる。拒まなければならないと頭では思うのに、体が言うことを利かない。
「ココ、さ……っ、ん」
そうこうしている内に唇は塞がれて、呆気なくそこにココの侵入を許してしまう。柔らかな舌が小松の舌を絡め取り、吸い上げる。歯列をなぞられ、口蓋を舐められればぞくぞくとした刺激が小松の背筋を通り過ぎた。
指先は小松の着物の前にある帯を解く。抵抗もなくするりと解かれ、すぐに肌が露わになる。ココはその姿を見て、ごくりと喉を鳴らした。
「ココさ、まって……っ」
小松の手が、ココの胸に縋る。浮いた背中を支えてやると、小松がほっとしたように息を吐いたのが見えた。
「……ご、めん。君の返事も、聞かないで」
「いい、んです。いいんですけど、でも、あの、ぼく、初めて、で……っ」
上手く出来ないと思うんです。
そんな小松の言葉に、ココはぐうとまた息を呑み込んだ。乱暴に押し倒して暴いてやりたいのを堪え、ココは努めて優しく小松の頭を撫でると、その肩に残っていた着物を落とす。
「……馬鹿だね、それでいいんだよ」
「ココさ……っ、」
もう言葉はいらないとばかりに、ココは小松の唇を塞いだ。頭を支えて畳の上に押し倒しながら、ココは小松の首筋に唇を寄せた。
吸いつけば紅い華が咲く。その肌に舌と指を這わせて、胸の頂きは避けて、その周りの色付いた場所を嬲る。
「……っ、く、ぅん」
ぴちゃ、と水音が響く。小松はその音に、耳を塞ぎたくなった。
一度だけ、一度だけ体を、心を許してもいいと、そう思えた人。
その人を目の前に、小松は今、まさに自身が夢を見ているのではと思っていた。
ここに売られた時は絶望した。もう二度とココに会うことも、外に出ることも叶わないのだろう、と。格子から見える外を眺めては、叶わぬ願いに涙を零した日も数知れない。
それなのに。
「ココ、さ……っ、ココさ、ぁんっ」
「可愛い、小松君」
夢にまで見た男に抱かれ、小松は身を捩る。御簾越しに何度も迫られたこともあった。ある時には、痺れを切らした客に強制的に御簾を取り払われ掛けた時もある。
小松はその時を思い出し、ぶるりと体を震わせた。
「小松君、」
柔らかな声が小松の耳に落ちた。優しい手付きと眼差しに、小松の凍り掛けた心がゆっくりと溶けだしていく。
「今は僕に、僕だけに集中して」
頬に手を置かれ、囁かれた言葉に小松は頷く。その太い首に腕を回し、小松はココに身を委ねた。
ココの手はゆっくりと小松の足を割開き、唇は段々と下降していく。
「……っ、ん、ん」
「声、出して。ここはそういう所なんだから、気にしなくていいんだよ」
声を抑える小松に気付いたココは、小松にそう言ってその唇を塞ぐ手を外させる。小松は困惑したように、ココを見上げた。
「だ、って……」
「恥じらう君も、とても可愛くて魅力的だけどね」
君の声が聞きたい。
そう言われてしまえば、ココの懇願に小松も観念したように顔を背ける。その顔は頬と言わず、耳まで紅く染まっていた。
「君が誰の物にもならなくて、よかった」
心の底からそう思っているような声音でココは告げる。その指先に、腕に、胸に、愛しむように口付けていくココの姿を見ながら、小松は早鐘のようにどんどん心臓がその鼓動を早くしていくのを感じていた。
「だ、れも、こんな僕を、抱こうなんて人、いません、よ……っ」
「そうかな。僕にはどんな花魁よりも、君が魅力的に見える」
「ん、ぁあっ!」
ココの手が、小松の中心部に触れた。既に先走りを零しているそこから密を絡め取り、ココはゆっくりとそれを上下に扱き始める。
僅かに汗ばんだ肌に唇で吸い付きながら、その唇もどんどんと下降していく。小松が気付いた頃には、もうそれは小松の中心部近くにまで降りてきていた。
「や、ココさ、だめ、あ、ぁっ!」
小松の制止の声も聞こえていないとばかりに、ココの荒い吐息が小松のそこに触れた。小松の花芯が、ココの口の中にくぷりと音を立てて飲み込まれていく。たまらないとばかりに腿をびくつかせる小松のそこに、ココの手が触れた。
ココの肩に足を掛けると、ココはそれでいいとばかりに自由になった手で小松の奥深くをなぞり始める。それは小松の出した粘液の滑りを借りて、するりと中に入り込んだ。
性急とも言える行為に、小松は悲鳴のようなか細い声をあげるので精一杯だった。
「ひ、ひぅ、あ、あ!」
既に部屋には淫靡な雰囲気が漂っている。ココが小松の密を啜る音、小松の奥深くを弄る音と二人分の荒い息遣い。まるで音の洪水のようなそれに、小松はどんどん翻弄されていく。
感じたことのない刺激が内部から、外から次々に送り込まれた。どうしたらいいのかわからず、小松はココの頭をくしゃりと撫でて、その名前を切なげに呼んだ。
「ここさ、ここ、さぁ……っ、」
小松の声に呼応するように先端に舌がねじ込まれる。裏筋を尖らせた舌が強く擦った。びくりと背筋を仰け反らせながら、小松はあっという間にそれを解放した。
高く細い声が響いたかと思えば、じゅるりとした音と共に小松の体からは力が抜けた。そこに一度軽く口付けたココは、口を拭いながら顔をあげた。
「流石、花魁の密は甘いね」
「ば、かぁっ」
小松は息も荒く、涙をぽろぽろ零しながら揶揄するようココの言葉を詰る。口元を緩めたココは、小松の額に小さく口付けを贈ると、すぐに小松の足を開かせて、濡れそぼるそこに自身を押し当てた。
「……っ、ひぐ、ここさ」
「挿れるよ」
熱に、怯える。
それでもそれがココであるのならば、構わないと、小松はそう思った。頷いた小松の中に、とてつもない質量と熱が入り込んでくる。
「ぁ、あああっ、あ、あー!」
「ぐ、ぅ……ッ、やっぱり、がっつき、すぎた、かな……っ、ごめん、小松君っ」
ココはゆっくり、ゆっくりとそれを押し進めていく。涙をぽろぽろ零す小松の顔中に口付けながら、身を捩る小松の体を宥めるように擦り、優しく言葉を掛ける。そうして、たっぷり時間を掛けながら、ココは小松の中へとようやく自身を埋め込むことが出来た。
「ひ、ひぃ、あ、あっ、くるひ、ここ、さ……ッ」
「ごめん、ね。少しずつでいいから、ゆっくり息を吐いて。そう、良い子だね」
ココの言葉に従いながら、顔中に降る口付けに小松は徐々に体の力を抜いていく。小松がぎゅうと閉じていた目を開けば、目の前には心配そうに自分を覗き込むココの姿があった。
「……っ、あっ」
「落ち着いたかい?」
優しい眼差しが小松を射抜く。頬を撫でられて、小松はこくりと一度だけ頷いた。
「ここ、さ……っ、ココさんっ、おしたい、して、ま……っ、ぁ、ああっ」
「っ、僕も余裕がない、あまり、煽らないでくれ」
小松のたどたどしい言葉遣いに、ココは興奮した。小松の返事に、これ以上ない程の喜びを覚える。けれど小松は、結ばれた筈なのにちっとも嬉しそうな顔はしていなかった。その瞳には悲しみが浮かび、珠の雫は相変わらず頬を伝い落ちていく。
「こんなとこ、に、いたく、ないっ! ぼく、ココさんと、いき、たい……」
それは紛れもない、小松の本心なのだろう。ココの胸に、甘い痛みが広がった。ぼろぼろと涙を零し続ける小松の目尻に唇を押し付けたココは、安心させるように小松に微笑む。
「……大丈夫、君は何も心配しなくていいよ」
「ココさ……?」
「今はただ、僕を感じて?」
「ひにゃ、ぁ、ああっ」
言いながら律動を開始したココの動きに、小松はすぐに快楽の濁流に飲み込まれる。
全身で感じるココの熱に、小松の目から快楽からくるそれとも、悲しみからくるそれとも違う新しい涙が零れ落ちていった。
「身請け、ですか!?」
「あぁ、うん。元々そのつもりで今日は来たんだ。貯金は一杯あるしね」
花魁の身請けなど、そんな一個人の貯金でどうにかなるものではない。小松はココの言葉に、眉を顰めた。
「ココさん、こんなことあんまり言いたくないですけど、僕は……」
ココは小松が皆まで言う前に、その唇を自身のそれで塞いだ。
「勿論、知ってる。それなら、君も気付くべきじゃない? 初見の僕が、どうしてここに一人で来られたのか」
小松はココの不思議な色を湛えた目を見上げた。確かに、ココの対応は食郭にしてはあまりにも特別すぎるように思われた。本来ならば、何度も通って初めて、花魁と二人きりで逢うことが許されるのが仕来たりの筈なのに。
小松の視線に、ココは口端を緩めた。小松の頬を撫でて、そっとその体を宝物のように抱きよせる。
「ふふ、フグ鯨10匹に、毒鮫の解体、毒山菜の仕分に毒蛇やその他、毒にまつわる食材に関する情報提供。それからまあ、貯金も結構持っていかれたけど、お金なんてどうでもいいからね」
ココの言葉に、小松は目を丸くした。その姿に、ココはくすくすと笑い声をあげて応える。
「君が売り飛ばされたと聞いた日から、僕は結構、死に物狂いだったんだよ」
それくらい、君が好きなんだから。
ココの言葉に、小松はまた涙を零す。その首に手を回し、小松は今度こそ喜びからくる涙を流しながら、ココに口付けた。
花街と呼ばれる所がある。そこは数々の美食屋が集まる場所。
密かに行われる色事と、提供される素晴らしい食事、それから情報収集。美食屋達にとって、そこは目で、身で、舌で、肌で味わう、一時の宿ともなるのが、食郭と呼ばれる場所だった。
名立たる食通達は名を連ねて花街へと足を運び、少しでも美味しい食事を食べたい一心で食郭へ大枚を叩く時代。
食が重視されるこの時代で、当然花街でも重視されるのは「食」であった。特に、この街で一番重視されるのは料理人である。花街の食郭には、小さな頃からそういった食に対して、厳しい訓練と教養を積み重ねてきた者達がいた。これを人々は「花魁」と呼んだ。
花魁は男女問わず、その手先に何かしらの食に関する技を身につけている。客はそれを求めて、食郭へと足を運んぶ。誰がそうしたわけでもなかったが、殆どの男女が「美」も兼ね備えていたために、色事目当てに通う者も多かった。
そんな宿の一つに、具瑠女茶屋と呼ばれる場所が一つ。そこは食通達の間でも、一目置かれている花魁がいる。その名を小松と呼んだ。
美味な食事を提供してくれるという噂の花魁は、しかし誰にも顔を見せたことがないということでも有名だった。
その花魁は誰が出向こうとも、御簾を挟んでしか会話をしない。故に、誰もそういった行為に及んだこともなければ、顔を見た者もいない。かろうじて、男であろうという推測が街を飛び交ってはいたが、それも奈何せん推測に過ぎない。これも人によってはその花魁を女だと断定する者もあれば、男だと言う者もいて、様々だった。
そんな不可解な様が人々の噂に尾ひれをつけ、「絶世の美男に違いない」という者もあれば「顔は焼けてただれてしまっているのだろう」と、そう噂する者もあり、謎に包まれた花魁は益々人々の心を魅了した。
そんな具瑠女茶屋に、一人の男が入り込んだ。その男はとても体躯の良い体をしていて、出てきた店の主人も思わず見上げてしまう程の長身だった。髪は黒く、正しく美男と呼ばれるに相応しい顔の、美しい男だった。
男は通された間でそれが来るのを待った。出された食事を大して口に運ぶこともなく、男は何とはなし部屋を見渡した。当然のように、生活感は微塵にも感じられない。
「お待たせいたしました」
奥の部屋、御簾のその先に人影が薄らと見える。小柄なその体躯からは性別は判断出来かねるか、男はそこにいるのが男だと知っていた。
「久々だね、小松君。僕のこと、覚えてる?」
「……っ! ココ、さん?」
「うん、僕だよ」
御簾の先で、男はじっと自分を見つめる視線を感じた。ココは柔らかな声で、御簾の先にいるその人へと声を掛けた。
「随分と探した」
ココは、そう言ってにこりと御簾の先に笑い掛けた。
御簾の先にいる小松は、僅かに困惑したような雰囲気を漂わせた。ココは徐に立ち上がると、ゆっくりと御簾の傍近くへと寄る。
「ココさ、」
「本当に、苦労したよ」
御簾の前まできたココは、緊張したようにそこで立ち止まった。二人の間にあるのは、頼りない壁が一つあるだけ。ココは、そこにゆっくりと手を掛けた。
「……開けても、いいかい?」
小松は答えなかった。ココはそれを了承と受け取り、そっと御簾を押し上げる。僅かな明かりに照れされて、その小柄な人の姿が露わになる。そこにいるのは、ココが探し求めてやまない小松の姿だった。
「小松君、やっと、見つけた……」
「本当に、ココさん……ですか?」
小松の唇には、薄らと紅が惹かれているようだった。上等の着物を着て座っている姿は、正しく牡丹のようにココには思えた。
ココは小松の目の前で膝をつくと、そっとその丸い頬に指先を這わす。
「あぁ、信じてくれ。間違いなく、君の知っているココだよ。ほら、覚えてる? 二人で海蛍を見に、海岸まで行ったりしたじゃないか。夏には祭りに行ったよね、君ってば本当に食いしん坊で……」
いつになく饒舌に喋ったココは、そこで口を噤んだ。その瞳に、僅かに苦痛の色が浮かぶ。
「ずっとあんな日々が続くと、信じて疑ってなかった」
ココは小松の華奢とも言える肩を優しく撫でた。上等な着物の肌触りは、けれどココの心をちっとも浮き上がらせてはくれなかった。
「君は一流の料理人になって、僕は一流の美食屋になって、二人で食材を取って、美味しい食事をするのが夢だと」
ココは不意に、そこで小松の目に涙が浮かんでいるのに気がついた。指先でその雫を拭ってやれば、小松の頬が掌に押し当てられる。
「遅くなって、すまない。まだ僕も未熟だったとはいえ、守ると誓ったのに……ごめん」
小松は静かに首を振る。その瞳から、ぽろりと涙が零れ落ちていった。
「こうして来てくれただけで、救われます。どうやって、ここに?」
「父に罪のない嘘をいくつか。父は情報には強いからね」
ココはそう言って、人の悪い笑みをそこに浮かべた。小さな頃から変わらないものをそこに見た気がして、小松は瞳を懐かしさに僅かに細めた。
「やっぱりあの時、君をあの家から攫っておけばよかった。まさか君をこんな所に……! 何か酷いことをされたりはしなかった?」
「いいえ、料理はいつでも僕の味方でしたし……ここのご主人も本当に良い方で、僕が料理を出来ると知ってからは、色々と取り計らってくれて」
色事についても、出来ないようにこうして取り計らってくれたんです。まあ、この顔だからでしょうけど。
そんな小松の言葉に、ココはほうと息を吐いた。不幸中の幸いと言った所だろうか。
「その噂については、聞いているよ。花街は君の噂で持ち切りだったからね」
ココは小松の頭を撫でて、ゆっくりとその胸にしまい込んだ。その小さな体を、香りを、堪能するようにその肩口に顔を埋める。小松も抵抗することなく、ココの胸に頬を擦り寄せる。
「……小松君、」
その声音に、小松の脳裏にずっと胸に仕舞い続けてきた想いが、思い出が、一挙に溢れ出てくるようだった。詰まりそうになる想いを吐き出し、小松はココを濡れた眼差しで見つめる。
「ずっと言いたかった……僕は、あの時から、ずっと、君が好きだった」
「ココ、さん」
真剣な眼差しで、表情で、ココは告げる。その真っ直ぐな眼差しに、声に、小松は息を詰めた。ココの唇が近付いてくる。拒まなければならないと頭では思うのに、体が言うことを利かない。
「ココ、さ……っ、ん」
そうこうしている内に唇は塞がれて、呆気なくそこにココの侵入を許してしまう。柔らかな舌が小松の舌を絡め取り、吸い上げる。歯列をなぞられ、口蓋を舐められればぞくぞくとした刺激が小松の背筋を通り過ぎた。
指先は小松の着物の前にある帯を解く。抵抗もなくするりと解かれ、すぐに肌が露わになる。ココはその姿を見て、ごくりと喉を鳴らした。
「ココさ、まって……っ」
小松の手が、ココの胸に縋る。浮いた背中を支えてやると、小松がほっとしたように息を吐いたのが見えた。
「……ご、めん。君の返事も、聞かないで」
「いい、んです。いいんですけど、でも、あの、ぼく、初めて、で……っ」
上手く出来ないと思うんです。
そんな小松の言葉に、ココはぐうとまた息を呑み込んだ。乱暴に押し倒して暴いてやりたいのを堪え、ココは努めて優しく小松の頭を撫でると、その肩に残っていた着物を落とす。
「……馬鹿だね、それでいいんだよ」
「ココさ……っ、」
もう言葉はいらないとばかりに、ココは小松の唇を塞いだ。頭を支えて畳の上に押し倒しながら、ココは小松の首筋に唇を寄せた。
吸いつけば紅い華が咲く。その肌に舌と指を這わせて、胸の頂きは避けて、その周りの色付いた場所を嬲る。
「……っ、く、ぅん」
ぴちゃ、と水音が響く。小松はその音に、耳を塞ぎたくなった。
一度だけ、一度だけ体を、心を許してもいいと、そう思えた人。
その人を目の前に、小松は今、まさに自身が夢を見ているのではと思っていた。
ここに売られた時は絶望した。もう二度とココに会うことも、外に出ることも叶わないのだろう、と。格子から見える外を眺めては、叶わぬ願いに涙を零した日も数知れない。
それなのに。
「ココ、さ……っ、ココさ、ぁんっ」
「可愛い、小松君」
夢にまで見た男に抱かれ、小松は身を捩る。御簾越しに何度も迫られたこともあった。ある時には、痺れを切らした客に強制的に御簾を取り払われ掛けた時もある。
小松はその時を思い出し、ぶるりと体を震わせた。
「小松君、」
柔らかな声が小松の耳に落ちた。優しい手付きと眼差しに、小松の凍り掛けた心がゆっくりと溶けだしていく。
「今は僕に、僕だけに集中して」
頬に手を置かれ、囁かれた言葉に小松は頷く。その太い首に腕を回し、小松はココに身を委ねた。
ココの手はゆっくりと小松の足を割開き、唇は段々と下降していく。
「……っ、ん、ん」
「声、出して。ここはそういう所なんだから、気にしなくていいんだよ」
声を抑える小松に気付いたココは、小松にそう言ってその唇を塞ぐ手を外させる。小松は困惑したように、ココを見上げた。
「だ、って……」
「恥じらう君も、とても可愛くて魅力的だけどね」
君の声が聞きたい。
そう言われてしまえば、ココの懇願に小松も観念したように顔を背ける。その顔は頬と言わず、耳まで紅く染まっていた。
「君が誰の物にもならなくて、よかった」
心の底からそう思っているような声音でココは告げる。その指先に、腕に、胸に、愛しむように口付けていくココの姿を見ながら、小松は早鐘のようにどんどん心臓がその鼓動を早くしていくのを感じていた。
「だ、れも、こんな僕を、抱こうなんて人、いません、よ……っ」
「そうかな。僕にはどんな花魁よりも、君が魅力的に見える」
「ん、ぁあっ!」
ココの手が、小松の中心部に触れた。既に先走りを零しているそこから密を絡め取り、ココはゆっくりとそれを上下に扱き始める。
僅かに汗ばんだ肌に唇で吸い付きながら、その唇もどんどんと下降していく。小松が気付いた頃には、もうそれは小松の中心部近くにまで降りてきていた。
「や、ココさ、だめ、あ、ぁっ!」
小松の制止の声も聞こえていないとばかりに、ココの荒い吐息が小松のそこに触れた。小松の花芯が、ココの口の中にくぷりと音を立てて飲み込まれていく。たまらないとばかりに腿をびくつかせる小松のそこに、ココの手が触れた。
ココの肩に足を掛けると、ココはそれでいいとばかりに自由になった手で小松の奥深くをなぞり始める。それは小松の出した粘液の滑りを借りて、するりと中に入り込んだ。
性急とも言える行為に、小松は悲鳴のようなか細い声をあげるので精一杯だった。
「ひ、ひぅ、あ、あ!」
既に部屋には淫靡な雰囲気が漂っている。ココが小松の密を啜る音、小松の奥深くを弄る音と二人分の荒い息遣い。まるで音の洪水のようなそれに、小松はどんどん翻弄されていく。
感じたことのない刺激が内部から、外から次々に送り込まれた。どうしたらいいのかわからず、小松はココの頭をくしゃりと撫でて、その名前を切なげに呼んだ。
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小松の声に呼応するように先端に舌がねじ込まれる。裏筋を尖らせた舌が強く擦った。びくりと背筋を仰け反らせながら、小松はあっという間にそれを解放した。
高く細い声が響いたかと思えば、じゅるりとした音と共に小松の体からは力が抜けた。そこに一度軽く口付けたココは、口を拭いながら顔をあげた。
「流石、花魁の密は甘いね」
「ば、かぁっ」
小松は息も荒く、涙をぽろぽろ零しながら揶揄するようココの言葉を詰る。口元を緩めたココは、小松の額に小さく口付けを贈ると、すぐに小松の足を開かせて、濡れそぼるそこに自身を押し当てた。
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熱に、怯える。
それでもそれがココであるのならば、構わないと、小松はそう思った。頷いた小松の中に、とてつもない質量と熱が入り込んでくる。
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ココはゆっくり、ゆっくりとそれを押し進めていく。涙をぽろぽろ零す小松の顔中に口付けながら、身を捩る小松の体を宥めるように擦り、優しく言葉を掛ける。そうして、たっぷり時間を掛けながら、ココは小松の中へとようやく自身を埋め込むことが出来た。
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「ごめん、ね。少しずつでいいから、ゆっくり息を吐いて。そう、良い子だね」
ココの言葉に従いながら、顔中に降る口付けに小松は徐々に体の力を抜いていく。小松がぎゅうと閉じていた目を開けば、目の前には心配そうに自分を覗き込むココの姿があった。
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「落ち着いたかい?」
優しい眼差しが小松を射抜く。頬を撫でられて、小松はこくりと一度だけ頷いた。
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「ココさ……?」
「今はただ、僕を感じて?」
「ひにゃ、ぁ、ああっ」
言いながら律動を開始したココの動きに、小松はすぐに快楽の濁流に飲み込まれる。
全身で感じるココの熱に、小松の目から快楽からくるそれとも、悲しみからくるそれとも違う新しい涙が零れ落ちていった。
「身請け、ですか!?」
「あぁ、うん。元々そのつもりで今日は来たんだ。貯金は一杯あるしね」
花魁の身請けなど、そんな一個人の貯金でどうにかなるものではない。小松はココの言葉に、眉を顰めた。
「ココさん、こんなことあんまり言いたくないですけど、僕は……」
ココは小松が皆まで言う前に、その唇を自身のそれで塞いだ。
「勿論、知ってる。それなら、君も気付くべきじゃない? 初見の僕が、どうしてここに一人で来られたのか」
小松はココの不思議な色を湛えた目を見上げた。確かに、ココの対応は食郭にしてはあまりにも特別すぎるように思われた。本来ならば、何度も通って初めて、花魁と二人きりで逢うことが許されるのが仕来たりの筈なのに。
小松の視線に、ココは口端を緩めた。小松の頬を撫でて、そっとその体を宝物のように抱きよせる。
「ふふ、フグ鯨10匹に、毒鮫の解体、毒山菜の仕分に毒蛇やその他、毒にまつわる食材に関する情報提供。それからまあ、貯金も結構持っていかれたけど、お金なんてどうでもいいからね」
ココの言葉に、小松は目を丸くした。その姿に、ココはくすくすと笑い声をあげて応える。
「君が売り飛ばされたと聞いた日から、僕は結構、死に物狂いだったんだよ」
それくらい、君が好きなんだから。
ココの言葉に、小松はまた涙を零す。その首に手を回し、小松は今度こそ喜びからくる涙を流しながら、ココに口付けた。
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