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はー、萌え滾るメールが本当に…凄くて!
十二国記で、
戦闘でケガしたトリコさんの血に気分が悪く鳴った小松君を、ココさんが諸官らの前にも関わらず抱き抱えて~…
とか、メール頂いてもー、萌え滾りましたよちくしょー。
そんなわけで、そんなココマどぞー。
十二国記で、
戦闘でケガしたトリコさんの血に気分が悪く鳴った小松君を、ココさんが諸官らの前にも関わらず抱き抱えて~…
とか、メール頂いてもー、萌え滾りましたよちくしょー。
そんなわけで、そんなココマどぞー。
「あー、大丈夫だから気にすんなって!」
ざわざわと広間が騒がしくなる。小松は首を傾げて、その人の群れを指差し、隣にいたココの袖をくいと引っ張った。
「あれ、なんの騒ぎでしょう?」
「さあ、来客予定はない筈だけどね。トリコが中心にいるようだけど……?」
戴国麒麟である小松と、戴国王であるココはその喧騒に首を傾げる。この王宮の中心部に近い場所が、こんなにも騒がしくなるのは珍しい。
けれど、それはある姿を見つけた瞬間に全てを把握することとなる。
「トリコさん……ッ!」
「小松君、待って! 駄目だ!」
ココの制止も振り切り、小さな体が思わずといった風に駆け出していた。血塗れのトリコが、鬱陶しそうにその体についた血を拭っている。
「小松……? って、触るんじゃねえ馬鹿!」
トリコに触れようとした小松に、トリコは大声でもって叱りつけた。びくりと震えた小さな体に、息も絶え絶えといった風なトリコは小さく舌打ちをして首を振った。
「ト、リコさん……」
「今、俺に近寄るんじゃねえよ!」
ココは何してやがるんだ! と、吐いて捨てるようにトリコは言う。その言葉に呼び出されるように、まるで飛び込むように走り込んで登場した王の姿に、一同がざわっとざわめいた。
くそっ、忌々しい飾りめ。と、ココがその身についていた王たる証である装飾物を投げ捨てていく。諸官らの悲鳴じみた声が聞こえたが、今のココの耳には何一つ入らない。
「小松君!」
「しゅじょ、う……」
既に小松の顔は青白く、具合が悪いのは傍目にも明らかだ。ふらりとよろけた体を、ココは慌てて抱きあげる。
「少し我慢してくれ、小松君」
「主上! 王たる証を投げ捨てるとはどういった見解か!」
近くにいた諸官らの抗議の言葉をまるっと無視し、ココはその場を後にする。
「ここの指揮は全てトリコに一任する! 食事でもなんでも好きにしろ」
「サンキュー、ココ!」
ココは小松を抱きあげたまま、急ぎ足で広間を突っ切っていく。鬱陶しくて重い装飾物を捨てたせいか、ココの足取りはいつもよりも早い。
不安気にココを見上げた小松に、いつものような優しい笑みは向けられなかった。
「主上……?」
「黙って!」
小松の言葉を遮り、ココが言う。滅多にないココの怒ったような口調に、小松は口を引き結んだ。大股でココが歩いて行くせいで、喧騒はすぐに遠退いて行った。
ココが向かった場所は寝所だった。いつも二人で使うその場所に向かう間、ココは一言も話さなかったし、声を掛けることさえ躊躇われた。それが余計に小松の不安を煽っていく。
寝所に入った所で、ばたんと扉が閉められた。暗い室内はどこか不穏な気配を漂わせているような気がして、余計に小松の不安を煽る。
「ココ、さ……ッ?」
小松は苦しそうに息を吐きだす。ココの腕が、小松の体を力強く抱き締めた。そのまま寝台に腰を降ろしたココは、小松の体を自身の膝の上に乗せて心配気な表情で小松の顔を覗き込む。
「……全く、無茶をしてくれる」
呆れたような、怒ったような声が小松の耳に届く。何か謝罪の言葉を口にしなければならないと思うのに、小松の口からは息が漏れるひゅうひゅうとした音しか出てこなかった。
これが血の穢れというやつか。と、小松は初めてそれを、思い知る。そして、今まで自分がどんなにか大事にされてきたのかを知った。
ココが遠征に行った時もそうだった。ずっと会えなかったのは、これを防ぐためだったのだと小松は身を持って今、わかってしまった。
寂しかったと言った自分に、「ごめんね」とどこか寂しげな笑みで抱き締めてきたいつかのココを思い出す。きっとあの時寂しかったのは、自分だけではなかったのだと、小松はようやく理解した。
遠征などで滞った政務に追われて会えなかったのではない。この血の穢れに小松が毒されることを恐れて、ココは自分に会わなかったのだ、と。
ぶわりと涙が溢れ出る。ココの思いやりに、愛情に、全てに包まれていることに、今更になって気がついた。
「小松君……」
どこか辛いのかい? 言いながら、ココの優しい指先が小松の目元を拭う。小松は首を振って、その言葉を否定した。確かに辛いけれど、体よりも胸の奥がしくしくと痛む。
「ごめ、なさ……っ、ぼく、勝手なことばかり言って、て……!」
「うん、今日のことは仕方ない……だけど、血の穢れは君にとって毒にしかならない。僕は、何度も君に教えていたよね?」
ココは小さく息を吐きだした。流石に先程の光景は、肝が冷えた。普通の麒麟よりは耐性があるとはいえ、小松は麒麟だ。恐らくトリコに切り捨てられた妖魔のものであろう血に触れようとしたその姿は、ココの心臓を凍らせるのに十二分の効力があった。
麒麟は本来、血の穢れを厭うもの。下手をすれば、自身から流れ出た血さえ毒となる。その血は麒麟の体を蝕み、やがては死へと至らしめる程のものにもなる。それなのに、小松ときたらその毒に自ら触れようとしていたのだ。肝が冷えない方がどうかしている。
「君は今まであまりああした場に遭遇したことがなかったから、気付かなかったんだね」
「ココさんがっ、そうして、くれてた、んでしょ? ぼく、それにも気付かない、で……」
我儘ばかり言ってました。しゃくりあげなから言う小松の姿に、ココも眉間に皺を寄せた。確かに小松に血を見させたくなかったのもあるが、自身が遠征に行った時などは格好悪いその汚れた姿を見せたくなかったのもある。
小松が麒麟であることを口実に、怪我が治るまで遠ざけたこともあった。勿論、小松に心配を掛けたくなかったというのも一つの理由ではあったのだが。
「そういうつもりではなかったのだけど……でも、わかったろう? 今後はもうこんな無茶はしないでくれ。君は少し、無茶をしすぎるきらいがあるから、僕はいつも気が気じゃないんだ」
小松はこくりと頷いた。今回ばかりは小松も身に沁みてわかったようだ。ココは小松を安心させるように微笑んで、その小さな体を寝台の上に横たわらせた。上掛けを掛けて、ココはその額に小さく口付けを贈る。
「おやすみ。僕はちょっとトリコと話をしてくるね」
「……僕、平気です、よ」
「ダーメ。君に何かあったら、僕はきっとこの国ごと、この世界を壊してしまうよ?」
それでもいい? と、ココが小松に問えば、それは駄目です。と、小さな麒麟が困ったように眉根を寄せた。ココは笑いながら「だったら、大人しくてて?」と、甘い顔で告げる。それでも煮え切らないのか、小松は不安そうにココの袖元を掴んだ。
「……僕の麒麟は、何かご不満かな?」
ややからかうように言いながらその小さな頭を撫でてやれば、小松の目が気持ちよさそうに閉じられる。甘えるように擦り寄る小松にこのまま食らいつきたい衝動を堪え、ココはその柔らかな頬に指先を滑らせた。
「あの、一緒に、いてほしい、んです」
人は病に伏せると人肌が恋しくなるとどこかで聞いた覚えがある。ココは小さく息を吐いて、腕を広げる。職務と、自身の半身であり、恋人でもある小松。ココにとって、最早その選択肢は悩むまでもないものだった。
「……おいで」
仕事なんてどうでも良い。今は、この目の前の弱っている小さな恋人の願いを叶えてやりたい。
ココの広げた腕を見て、小松が嬉しそうにむくりと身を起こす。震えている体は、やはりそれだけダメージを受けてしまったのだろう。自分の体を支えることさえ辛そうなその姿を痛々しく思いながら、ココはその体をまるで精巧な硝子細工のように扱う。
腕の中に静かに入り込んできた小さなその体を抱き締めて、ココはゆっくりと寝台の上に横たわった。上掛けを手繰り寄せて小松の体ごと、自身の体も包みこむ。
「あったかいです」
「そうだね」
ココの胸元に頬を甘えるように擦りつける小松の姿が愛らしい。ココはその小さな背中を、ぽんぽんと優しく叩いてやった。
「少し休んだら、医者に行こうね」
「過保護すぎます」
「それだけ君が大事ってことなの」
不貞腐れたような小松の顔に笑い、ココは小松を宥めすかすようにその背中を撫でるものへと変えた。うとうとと瞼を閉じては開くことを繰り返す小 松を、ココは愛しげに見下ろす。小松の顔がゆるりと持ち上がり、ココをその潤んだ瞳に映し出した。悲しげな表情に、ココは僅かに首を捻る。
「ココさん」
「……うん?」
「何も知らなくて、ごめんなさい。僕、まだまだ未熟な麒麟ですけど、ココさんの横に立っても恥ずかしくない麒麟にな……」
ココの指先がちょんと小松の唇に触れる。その先を塞いだココに、小松はその目に不思議そうな色を浮かべる。そんな小松を見つめるココの眉間には皺が寄り、小松の唇を塞いだまま、ココは不貞腐れたように唇を開いた。
「また君は、そうやって義務とか、立場ばっかりを考える」
小松の背中に回した手に力を籠めて、小松が痛いくらいの力でもってココはその小さな体を抱き締めた。その肩に乗る重い責務を、ココは重々承知している。けれど、せめてこんな時くらい、そんな煩わしいことなんか考えずにいて欲しい。
そんなココの想いを知ってか知らずか、難しい顔をしていたココの唇に、小松は伸びあがって口付けた。びくりと震えたココに、小松はふわりと笑って見せる。
「小松君……?」
「僕も、主上の……ココさんの、力になりたい」
僕はまだまだ弱いし、政治的な助言だって出来はしない。いつも助けて貰ってばかりだ。と、小松は告げる。小松の抱いていた密かな想いを、ココは今日初めて聞いたような気がした。
「ちょっとでもいいから、ココさんの力になりたいんです」
そのために少しでも早く一人前になりたい。と、小松は言う。蓬莱から来た麒麟は、この国のことを多くは知らない。言葉には困らないが、最初はそ れこそ文字すらも書けなかった。少しずつ、少しずつ回りから吸収していくしかない小松は、今のこの状態が酷くもどかしく思えるのだろう。
「…………僕の、ためなの?」
ココは小松の言葉に、確認するように腕の中を覗き込んだ。
「や、そういうわけじゃ……結局僕がしたいことをしているだけで、つまり、僕のため、で……!」
「……僕のため、なんだね」
「そ、そんなおこがましいこ、と!」
小松は違うと必死に否定をするが、ココはその姿にぐっと胸に迫るものを感じて、小松をぎゅうと抱き締めた。
苦しいですという小松の抗議の声は、ココの中で黙殺された。
「馬鹿な子だね」
日頃から一生懸命仕事をして、勉強をして、周りの声を聞いて、色々と小松が精力的に動いていたのは知っている。それは彼が麒麟だから、国のため に、民のために、必死に国を良くしたくて働いているのだと、ココは勝手にそう思っていた。そしてそんな小松の姿に、もっと自分のことを見てくれたらいいの にという、自己中心的な思いがそこにあったのであろうこともココは認めた。これも彼が麒麟だからという、勝手な先入観だったのだろうと、ココは思いを改める。
「馬鹿ってなんですか、馬鹿って。蓬莱では、馬鹿って言った人が馬鹿なんですよ」
「……そうかもね」
不貞腐れたように頬を膨らませた小松に、ココは小さく笑う。ずっと自分だけを見てくれていたのであろう小松に、ココはじわじわと込み上げる何かを押し殺すように言葉をなんとか吐き出した。小松がそんなココの声音に、ふと不安そうにココを見上げる。
「……ココさん? 大丈夫、ですか?」
「あぁ、平気だよ。愛されてるなって、ちょっと、実感しただけ」
小松の頬に朱が散った。シーツを頭まで被り、ココの胸の上で縮こまった小松にココは小さく微笑む。
「ね、小松君」
芋虫みたいになった腹の上の小松に、ココは優しく語り掛ける。びくりと震えたシーツを見下ろしながら、ココは自分達を包む幸福を感じながら、そっと微笑んだ。
「君が一生懸命色々とやってくれるのは良いことだし、喜ばしいことだよ。僕も官吏達から色々聞いているから、鼻が高い。僕の麒麟はいっつも一生懸命で、誰にでも温かくて、優しくて、素敵な人だと思う。他の国にも自慢してやりたいくらい」
ココの言葉に、小松が僅かにシーツから顔を覗かせた。その視線を絡め取りながら、ココはそっとその小さな背中を再び撫で始める。
「だけどね、同時に不安でもあるんだ。君が無理し過ぎてるんじゃないか、とか、今辛いんじゃないか、とかね」
「そ、そんなことは……!」
「僕に嘘はつかないでね、小松君」
シーツから飛び出てきた小松の唇を再び指先で塞ぎながら、ココは少し困ったように笑う。ぐっと言葉に詰まった小松のその姿が、既に答えのようなものだった。
「僕の隣に見合うように、とか、恥ずかしくない麒麟になるとか、そんなことはどうでもいいんだ。君が、僕の隣で笑っていてくれるのなら、僕はそれだけで十分だよ」
「でも、それじゃあ……!」
「君は少し、先を急ぎ過ぎているんだ。少しずつ、少しずつ勉強していけばいい。何も今すぐに全てをこなす必要はないと、僕はそう言っているんだ」
がばりと胸の上で起き上がった小松に、ココは柔らかく笑って見せる。小松の目尻で、じわりと何かが光っていた。
「ココさんは、僕に甘すぎです!」
「君が自分に厳しすぎるから、これでいいでしょ」
その目元を拭ってやりながら、ココは笑った。その笑みに、小松は唇を噛み締めてぽすんとココの胸に頭を凭れさせた。暫く呻きながらココの胸に頭を押し付けていたのは、照れ隠しだろう。
そんな小松の小さな頭を撫でていれば、もぞもぞと動いていた頭はすぐに睡魔に襲われ始めたようだ。うとうととしだした小松の体に上掛けを掛けて、優しく優しく、まるで赤子にそうするように、一定のリズムで背中を叩いてやる。
「……ココさんの、ばかぁ」
小松はその言葉を最後に、意識を手放したようだった。世界で一番安心出来る腕の中で、大好きな温もりに包まれて小松は眠ったようだ。ココはその姿を確認してから、そっと目を閉じる。
「……馬鹿って言った人が、馬鹿なんだろう?」
馬鹿な王と麒麟で、ちょうどいいんじゃないかな。
そんなココの小さな呟きは、静かな寝息にそっと掻き消されていった。
トリコさんもちょっと怪我してるけど、殆どが妖魔の血。
まだ統治が始まったばかりの戴。時間的に統治後3-4年後辺りが望ましい?w
殆どもういないけど、やっぱり妖魔はどこかに潜んでいて、そんな妖魔を退治しにいくのは当然禁軍左将軍のトリコさん。
ココさんはもっと妖魔がはびこってた時に遠征してたりする。
蓬莱から十二国にきた人って大変そうですよねー。仙じゃなきゃ言葉も通じないし文字もちんぷんかんぷんだし。
小松君は麒麟なので、言葉はわかるけど文字は読めない。から、勉強中。
何もかもが違う元の世界と、今の世界のちぐはぐさにはなんとか慣れてきたけど、まだ法律とかはわかってない感じ。
だから何か政治的なことを話されてもわからない単語とかがあって、それに焦燥感を覚える頃だと思うんですよ。
焦って色々勉強するけど、追いつかない。でもココさんの役に立ちたい。
ココさんが大変だって知ってるから、ちょっとでもその負担を減らせる存在になりたい。
苦しくて仕方ないけど、不安に思っていることとかはあんまり見せられないなとそんな板挟みで苦しんでたら
アーアー!!
こまつくぅぅううん!!ってなる私の図ができる←
ココさんはきっとそんなことは望んでいなくて、隣で楽しそうに嬉しそうに笑っている小松君がいたらもうなんでもいい!もしもその笑顔を奪うのが国や天帝であるのであれば、あの人は遠慮なく国を破壊しますよねー。とか、
ココさんは小松君のために国政に精を出している気がします。とかいう、メールでのお言葉に本当にただただ頷くことしかできませんでした。
ココさんは……もしもそんなことになれば、きっと世界ごと滅ぼすくらいわけなくやるよね!!wwww
ざわざわと広間が騒がしくなる。小松は首を傾げて、その人の群れを指差し、隣にいたココの袖をくいと引っ張った。
「あれ、なんの騒ぎでしょう?」
「さあ、来客予定はない筈だけどね。トリコが中心にいるようだけど……?」
戴国麒麟である小松と、戴国王であるココはその喧騒に首を傾げる。この王宮の中心部に近い場所が、こんなにも騒がしくなるのは珍しい。
けれど、それはある姿を見つけた瞬間に全てを把握することとなる。
「トリコさん……ッ!」
「小松君、待って! 駄目だ!」
ココの制止も振り切り、小さな体が思わずといった風に駆け出していた。血塗れのトリコが、鬱陶しそうにその体についた血を拭っている。
「小松……? って、触るんじゃねえ馬鹿!」
トリコに触れようとした小松に、トリコは大声でもって叱りつけた。びくりと震えた小さな体に、息も絶え絶えといった風なトリコは小さく舌打ちをして首を振った。
「ト、リコさん……」
「今、俺に近寄るんじゃねえよ!」
ココは何してやがるんだ! と、吐いて捨てるようにトリコは言う。その言葉に呼び出されるように、まるで飛び込むように走り込んで登場した王の姿に、一同がざわっとざわめいた。
くそっ、忌々しい飾りめ。と、ココがその身についていた王たる証である装飾物を投げ捨てていく。諸官らの悲鳴じみた声が聞こえたが、今のココの耳には何一つ入らない。
「小松君!」
「しゅじょ、う……」
既に小松の顔は青白く、具合が悪いのは傍目にも明らかだ。ふらりとよろけた体を、ココは慌てて抱きあげる。
「少し我慢してくれ、小松君」
「主上! 王たる証を投げ捨てるとはどういった見解か!」
近くにいた諸官らの抗議の言葉をまるっと無視し、ココはその場を後にする。
「ここの指揮は全てトリコに一任する! 食事でもなんでも好きにしろ」
「サンキュー、ココ!」
ココは小松を抱きあげたまま、急ぎ足で広間を突っ切っていく。鬱陶しくて重い装飾物を捨てたせいか、ココの足取りはいつもよりも早い。
不安気にココを見上げた小松に、いつものような優しい笑みは向けられなかった。
「主上……?」
「黙って!」
小松の言葉を遮り、ココが言う。滅多にないココの怒ったような口調に、小松は口を引き結んだ。大股でココが歩いて行くせいで、喧騒はすぐに遠退いて行った。
ココが向かった場所は寝所だった。いつも二人で使うその場所に向かう間、ココは一言も話さなかったし、声を掛けることさえ躊躇われた。それが余計に小松の不安を煽っていく。
寝所に入った所で、ばたんと扉が閉められた。暗い室内はどこか不穏な気配を漂わせているような気がして、余計に小松の不安を煽る。
「ココ、さ……ッ?」
小松は苦しそうに息を吐きだす。ココの腕が、小松の体を力強く抱き締めた。そのまま寝台に腰を降ろしたココは、小松の体を自身の膝の上に乗せて心配気な表情で小松の顔を覗き込む。
「……全く、無茶をしてくれる」
呆れたような、怒ったような声が小松の耳に届く。何か謝罪の言葉を口にしなければならないと思うのに、小松の口からは息が漏れるひゅうひゅうとした音しか出てこなかった。
これが血の穢れというやつか。と、小松は初めてそれを、思い知る。そして、今まで自分がどんなにか大事にされてきたのかを知った。
ココが遠征に行った時もそうだった。ずっと会えなかったのは、これを防ぐためだったのだと小松は身を持って今、わかってしまった。
寂しかったと言った自分に、「ごめんね」とどこか寂しげな笑みで抱き締めてきたいつかのココを思い出す。きっとあの時寂しかったのは、自分だけではなかったのだと、小松はようやく理解した。
遠征などで滞った政務に追われて会えなかったのではない。この血の穢れに小松が毒されることを恐れて、ココは自分に会わなかったのだ、と。
ぶわりと涙が溢れ出る。ココの思いやりに、愛情に、全てに包まれていることに、今更になって気がついた。
「小松君……」
どこか辛いのかい? 言いながら、ココの優しい指先が小松の目元を拭う。小松は首を振って、その言葉を否定した。確かに辛いけれど、体よりも胸の奥がしくしくと痛む。
「ごめ、なさ……っ、ぼく、勝手なことばかり言って、て……!」
「うん、今日のことは仕方ない……だけど、血の穢れは君にとって毒にしかならない。僕は、何度も君に教えていたよね?」
ココは小さく息を吐きだした。流石に先程の光景は、肝が冷えた。普通の麒麟よりは耐性があるとはいえ、小松は麒麟だ。恐らくトリコに切り捨てられた妖魔のものであろう血に触れようとしたその姿は、ココの心臓を凍らせるのに十二分の効力があった。
麒麟は本来、血の穢れを厭うもの。下手をすれば、自身から流れ出た血さえ毒となる。その血は麒麟の体を蝕み、やがては死へと至らしめる程のものにもなる。それなのに、小松ときたらその毒に自ら触れようとしていたのだ。肝が冷えない方がどうかしている。
「君は今まであまりああした場に遭遇したことがなかったから、気付かなかったんだね」
「ココさんがっ、そうして、くれてた、んでしょ? ぼく、それにも気付かない、で……」
我儘ばかり言ってました。しゃくりあげなから言う小松の姿に、ココも眉間に皺を寄せた。確かに小松に血を見させたくなかったのもあるが、自身が遠征に行った時などは格好悪いその汚れた姿を見せたくなかったのもある。
小松が麒麟であることを口実に、怪我が治るまで遠ざけたこともあった。勿論、小松に心配を掛けたくなかったというのも一つの理由ではあったのだが。
「そういうつもりではなかったのだけど……でも、わかったろう? 今後はもうこんな無茶はしないでくれ。君は少し、無茶をしすぎるきらいがあるから、僕はいつも気が気じゃないんだ」
小松はこくりと頷いた。今回ばかりは小松も身に沁みてわかったようだ。ココは小松を安心させるように微笑んで、その小さな体を寝台の上に横たわらせた。上掛けを掛けて、ココはその額に小さく口付けを贈る。
「おやすみ。僕はちょっとトリコと話をしてくるね」
「……僕、平気です、よ」
「ダーメ。君に何かあったら、僕はきっとこの国ごと、この世界を壊してしまうよ?」
それでもいい? と、ココが小松に問えば、それは駄目です。と、小さな麒麟が困ったように眉根を寄せた。ココは笑いながら「だったら、大人しくてて?」と、甘い顔で告げる。それでも煮え切らないのか、小松は不安そうにココの袖元を掴んだ。
「……僕の麒麟は、何かご不満かな?」
ややからかうように言いながらその小さな頭を撫でてやれば、小松の目が気持ちよさそうに閉じられる。甘えるように擦り寄る小松にこのまま食らいつきたい衝動を堪え、ココはその柔らかな頬に指先を滑らせた。
「あの、一緒に、いてほしい、んです」
人は病に伏せると人肌が恋しくなるとどこかで聞いた覚えがある。ココは小さく息を吐いて、腕を広げる。職務と、自身の半身であり、恋人でもある小松。ココにとって、最早その選択肢は悩むまでもないものだった。
「……おいで」
仕事なんてどうでも良い。今は、この目の前の弱っている小さな恋人の願いを叶えてやりたい。
ココの広げた腕を見て、小松が嬉しそうにむくりと身を起こす。震えている体は、やはりそれだけダメージを受けてしまったのだろう。自分の体を支えることさえ辛そうなその姿を痛々しく思いながら、ココはその体をまるで精巧な硝子細工のように扱う。
腕の中に静かに入り込んできた小さなその体を抱き締めて、ココはゆっくりと寝台の上に横たわった。上掛けを手繰り寄せて小松の体ごと、自身の体も包みこむ。
「あったかいです」
「そうだね」
ココの胸元に頬を甘えるように擦りつける小松の姿が愛らしい。ココはその小さな背中を、ぽんぽんと優しく叩いてやった。
「少し休んだら、医者に行こうね」
「過保護すぎます」
「それだけ君が大事ってことなの」
不貞腐れたような小松の顔に笑い、ココは小松を宥めすかすようにその背中を撫でるものへと変えた。うとうとと瞼を閉じては開くことを繰り返す小 松を、ココは愛しげに見下ろす。小松の顔がゆるりと持ち上がり、ココをその潤んだ瞳に映し出した。悲しげな表情に、ココは僅かに首を捻る。
「ココさん」
「……うん?」
「何も知らなくて、ごめんなさい。僕、まだまだ未熟な麒麟ですけど、ココさんの横に立っても恥ずかしくない麒麟にな……」
ココの指先がちょんと小松の唇に触れる。その先を塞いだココに、小松はその目に不思議そうな色を浮かべる。そんな小松を見つめるココの眉間には皺が寄り、小松の唇を塞いだまま、ココは不貞腐れたように唇を開いた。
「また君は、そうやって義務とか、立場ばっかりを考える」
小松の背中に回した手に力を籠めて、小松が痛いくらいの力でもってココはその小さな体を抱き締めた。その肩に乗る重い責務を、ココは重々承知している。けれど、せめてこんな時くらい、そんな煩わしいことなんか考えずにいて欲しい。
そんなココの想いを知ってか知らずか、難しい顔をしていたココの唇に、小松は伸びあがって口付けた。びくりと震えたココに、小松はふわりと笑って見せる。
「小松君……?」
「僕も、主上の……ココさんの、力になりたい」
僕はまだまだ弱いし、政治的な助言だって出来はしない。いつも助けて貰ってばかりだ。と、小松は告げる。小松の抱いていた密かな想いを、ココは今日初めて聞いたような気がした。
「ちょっとでもいいから、ココさんの力になりたいんです」
そのために少しでも早く一人前になりたい。と、小松は言う。蓬莱から来た麒麟は、この国のことを多くは知らない。言葉には困らないが、最初はそ れこそ文字すらも書けなかった。少しずつ、少しずつ回りから吸収していくしかない小松は、今のこの状態が酷くもどかしく思えるのだろう。
「…………僕の、ためなの?」
ココは小松の言葉に、確認するように腕の中を覗き込んだ。
「や、そういうわけじゃ……結局僕がしたいことをしているだけで、つまり、僕のため、で……!」
「……僕のため、なんだね」
「そ、そんなおこがましいこ、と!」
小松は違うと必死に否定をするが、ココはその姿にぐっと胸に迫るものを感じて、小松をぎゅうと抱き締めた。
苦しいですという小松の抗議の声は、ココの中で黙殺された。
「馬鹿な子だね」
日頃から一生懸命仕事をして、勉強をして、周りの声を聞いて、色々と小松が精力的に動いていたのは知っている。それは彼が麒麟だから、国のため に、民のために、必死に国を良くしたくて働いているのだと、ココは勝手にそう思っていた。そしてそんな小松の姿に、もっと自分のことを見てくれたらいいの にという、自己中心的な思いがそこにあったのであろうこともココは認めた。これも彼が麒麟だからという、勝手な先入観だったのだろうと、ココは思いを改める。
「馬鹿ってなんですか、馬鹿って。蓬莱では、馬鹿って言った人が馬鹿なんですよ」
「……そうかもね」
不貞腐れたように頬を膨らませた小松に、ココは小さく笑う。ずっと自分だけを見てくれていたのであろう小松に、ココはじわじわと込み上げる何かを押し殺すように言葉をなんとか吐き出した。小松がそんなココの声音に、ふと不安そうにココを見上げる。
「……ココさん? 大丈夫、ですか?」
「あぁ、平気だよ。愛されてるなって、ちょっと、実感しただけ」
小松の頬に朱が散った。シーツを頭まで被り、ココの胸の上で縮こまった小松にココは小さく微笑む。
「ね、小松君」
芋虫みたいになった腹の上の小松に、ココは優しく語り掛ける。びくりと震えたシーツを見下ろしながら、ココは自分達を包む幸福を感じながら、そっと微笑んだ。
「君が一生懸命色々とやってくれるのは良いことだし、喜ばしいことだよ。僕も官吏達から色々聞いているから、鼻が高い。僕の麒麟はいっつも一生懸命で、誰にでも温かくて、優しくて、素敵な人だと思う。他の国にも自慢してやりたいくらい」
ココの言葉に、小松が僅かにシーツから顔を覗かせた。その視線を絡め取りながら、ココはそっとその小さな背中を再び撫で始める。
「だけどね、同時に不安でもあるんだ。君が無理し過ぎてるんじゃないか、とか、今辛いんじゃないか、とかね」
「そ、そんなことは……!」
「僕に嘘はつかないでね、小松君」
シーツから飛び出てきた小松の唇を再び指先で塞ぎながら、ココは少し困ったように笑う。ぐっと言葉に詰まった小松のその姿が、既に答えのようなものだった。
「僕の隣に見合うように、とか、恥ずかしくない麒麟になるとか、そんなことはどうでもいいんだ。君が、僕の隣で笑っていてくれるのなら、僕はそれだけで十分だよ」
「でも、それじゃあ……!」
「君は少し、先を急ぎ過ぎているんだ。少しずつ、少しずつ勉強していけばいい。何も今すぐに全てをこなす必要はないと、僕はそう言っているんだ」
がばりと胸の上で起き上がった小松に、ココは柔らかく笑って見せる。小松の目尻で、じわりと何かが光っていた。
「ココさんは、僕に甘すぎです!」
「君が自分に厳しすぎるから、これでいいでしょ」
その目元を拭ってやりながら、ココは笑った。その笑みに、小松は唇を噛み締めてぽすんとココの胸に頭を凭れさせた。暫く呻きながらココの胸に頭を押し付けていたのは、照れ隠しだろう。
そんな小松の小さな頭を撫でていれば、もぞもぞと動いていた頭はすぐに睡魔に襲われ始めたようだ。うとうととしだした小松の体に上掛けを掛けて、優しく優しく、まるで赤子にそうするように、一定のリズムで背中を叩いてやる。
「……ココさんの、ばかぁ」
小松はその言葉を最後に、意識を手放したようだった。世界で一番安心出来る腕の中で、大好きな温もりに包まれて小松は眠ったようだ。ココはその姿を確認してから、そっと目を閉じる。
「……馬鹿って言った人が、馬鹿なんだろう?」
馬鹿な王と麒麟で、ちょうどいいんじゃないかな。
そんなココの小さな呟きは、静かな寝息にそっと掻き消されていった。
トリコさんもちょっと怪我してるけど、殆どが妖魔の血。
まだ統治が始まったばかりの戴。時間的に統治後3-4年後辺りが望ましい?w
殆どもういないけど、やっぱり妖魔はどこかに潜んでいて、そんな妖魔を退治しにいくのは当然禁軍左将軍のトリコさん。
ココさんはもっと妖魔がはびこってた時に遠征してたりする。
蓬莱から十二国にきた人って大変そうですよねー。仙じゃなきゃ言葉も通じないし文字もちんぷんかんぷんだし。
小松君は麒麟なので、言葉はわかるけど文字は読めない。から、勉強中。
何もかもが違う元の世界と、今の世界のちぐはぐさにはなんとか慣れてきたけど、まだ法律とかはわかってない感じ。
だから何か政治的なことを話されてもわからない単語とかがあって、それに焦燥感を覚える頃だと思うんですよ。
焦って色々勉強するけど、追いつかない。でもココさんの役に立ちたい。
ココさんが大変だって知ってるから、ちょっとでもその負担を減らせる存在になりたい。
苦しくて仕方ないけど、不安に思っていることとかはあんまり見せられないなとそんな板挟みで苦しんでたら
アーアー!!
こまつくぅぅううん!!ってなる私の図ができる←
ココさんはきっとそんなことは望んでいなくて、隣で楽しそうに嬉しそうに笑っている小松君がいたらもうなんでもいい!もしもその笑顔を奪うのが国や天帝であるのであれば、あの人は遠慮なく国を破壊しますよねー。とか、
ココさんは小松君のために国政に精を出している気がします。とかいう、メールでのお言葉に本当にただただ頷くことしかできませんでした。
ココさんは……もしもそんなことになれば、きっと世界ごと滅ぼすくらいわけなくやるよね!!wwww
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