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前に載せた本編の続きです。
FF7小説 読むにあたっての注意書き
ザックスとクラウドが、ニブル屋敷以降、神羅の手から上手く逃れたことを前提とした本編沿い小説
なので、ザックスは生きています。
ちなみに二人はまだ出来ていません。
管理人の本編の進み具合で進めていけたらいいかなあと思いつつ。
言わずもがな、ザックラです。
以上! OKの方のみ続きからどうぞ!
魔晄炉の爆発という大掛かりな任務は、無事に終わった。
大掛かりといっても、クラウドにしてみればそれは大したことのない任務だった。
スラムに戻るための列車には各自乗り込むようにとだけ伝えて、バレットと仲間たちは散り散りになった。
報酬を貰うためには、その列車に乗ってアジトに戻らなければならない。また小さく溜息を吐いたクラウドは、騒がしいミッドガルの町を通り抜ける。
自分が見慣れていた筈の都会は、面影を残していてもやはり記憶とは違う。
違和感というよりはどこか苦しい想いを抱え、クラウドは足取り重く歩きだす。
「…ねえ、クラウドじゃない?」
聞きなれた声に振り向くと、そこには見慣れた顔がいた。
教会で花の世話をする彼女は、優しい笑みを浮かべてそこに立っていた。
「やっぱり! そのツンツン頭、見間違えるわけないもん、ね?」
「エアリス、何してるんだ」
「何って、わからない?」
ほらっ! と、彼女が指で示した場所には、花いっぱいのワゴンがあった。
確かザックスが、ミッドガルになんとか戻ってきて落ち着いた時に、新しく作っていたものだ。
そのワゴンの中には、瑞々しい花々が綺麗に飾られている。
「きれい、だな」
「当然でしょう? ね、1ギルで、どう?」
クラウド達の部屋の花瓶に植えてあるのは、いつもエアリスが持ってきてくれるものだった。お金を払おうとしても、いつも彼女は受け取らない。
折角の機会だし、と、クラウドは苦笑を浮かべて頷いた。
「ふふっ、優しいね、クラウド。ザックスは元気?」
花を1輪手渡すと、彼女は花のように綻んだ笑顔を浮かべた。
「ああ、ピンピンしてる」
「そっか、また教会にも顔出してね、二人で。今は仕事中でしょ? あんまり邪魔しちゃ悪いから、行くね」
「あぁ、ごめん。またその内、あいつと行くよ」
彼女がにっこりと笑って、背中を向けて歩き出す。
思わぬ知り合いの登場に、うっかり気が抜けたクラウドは頭を振った。
約束の時間に遅れては、何を言われるかわかったものではない。
彼は静かに、駅の方向へと走り出した。
町が騒がしい。あんなことがあれば当然だろうと駆け抜けていくと、思わぬ声に止められた。
「おい! そこの男!」
ちらりと見た姿は、見慣れた制服姿だった。
「……神羅兵か…」
遠くから聞こえてきた音がこちらに来るまでには、もう少し時間が掛りそうだった。
襲い掛かってくる兵達を伸しながら進む。段々と辺りが、より一層騒がしくなる。
どうやら騒ぎを聞きつけた兵達が、ここに向かっているらしい。
クラウドは軽く舌打ちをすると、新たに襲い掛かってきた兵士達をその場で叩き伏せ、目的の場所を目指して走る。
すぐにその場所に辿り着きはしたものの、クラウドはそこで追いかけてきた兵士達に囲まれた。
それはどこか、あの日を彷彿とさせた。
その光景に多少どきりとしたものの、今はあの時とは違うと、クラウドは兵士達を見渡した。
「ここまでだな」
リーダー格らしい一人の兵士が、人の悪い笑みを口元に浮かべてクラウドに一歩近付く。
先程は遠くにあった音が、すぐ近くまで来ていた。クラウドは口端をあげて、兵士達に向き直る。
「残念だが、おまえらの相手をしてるほどヒマじゃないんでな」
「たわごとを……よし捕らえろ!!」
クラウドを囲んだ兵士達が一斉にクラウドに襲い掛かった。
既に先程からしていた音は、背後で轟音を立て始めている。
クラウドは確認するまでもなく、すぐさま後ろ手の塀をひらりと飛び越えると、そのすぐ下を通過していく電車に飛び移った。
兵士が銃を構えても、既に遅い。電車はすぐにトンネルの中へと潜り込み、クラウドと共に暗闇の中へと姿を消して行った。
クラウドは電車の屋根の上でバランスを取りながら、バレット達のいる車両を目指して暗闇の中を進んでいく。
先程の神羅兵の言動を思い出しながら、クラウドはそっと溜息を吐いた。
彼らは今回の騒動以外のことについては、何も知らなかったらしい。
ミッドガルに常駐する下っ端の神羅兵には、数か月前の事件のことや、捕獲命令が出ている人間のことは知らされていないようだ。
クラウドは飛び乗った電車の上で、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「とうちゃん!」
セブンスヘブンの扉を潜ると、小さな女の子がぱっと顔を輝かせてクラウドを出迎える。
けれどすぐに人違いをしたことに気付くと、照れたように黒髪の女性…ティファの後ろへと隠れてしまった。
「ほら、マリン! クラウドにおかえりなさいは?」
照れた女の子は何も言い出せず、そのまま背中に隠れているだけだった。
「ごめんね。マリン、照れてるみたい」
「…あぁ、構わないよ」
「あら? 花なんて、珍しいわね」
マリンがじっとその花を眺めていたので差しだすと、彼女は嬉しそうに受け取って、また照れたのかティファの後ろに隠れてしまった。
その姿に苦笑を浮かべると、ティファの微笑む視線とぶつかって、クラウドは気まずそうに視線を逸らした。
ティファが何かを言いかける間際、バレットが荒々しく扉を潜ってきた。すぐさま語気荒く会議を始めるとだけ告げると、そのまま下に降りていく。
慌てたように三人の部下が、それに続いて階下に降りて行った。
「ね、クラウドも何か飲んだら?」
下に降りようとするクラウドに声を掛けて、今度はティファが苦笑に近い笑みを浮かべる。
躊躇するクラウドに、ちょっとくらいなら平気だとティファは手招きする。
「ほら! どうぞ、座って?」
席を示されては、もはや座らないわけにもいかず、クラウドは大人しく彼女の言われるがままの席に座った。
「一応、一通り作れるけど…何飲む?」
「それじゃあ、きついのを」
「ちょっと待ってて」
彼女は小さく頷いて、すぐにシェイカーを振り始めた。
出来上がったそれをクラウドに渡すと、彼女はほっとしたように笑う。
「なんだかほっとしちゃった、クラウドが無事に戻ってきて」
クラウドはティファと他愛もない会話をしながら、ふと遠くに思いを馳せる。
不思議な気分だった。酒なら一般兵だった頃に、ザックスに無理やり何度か飲まされたことはある。
未成年なのにと反発するクラウドと、無礼講だと笑うザックスと、よくじゃれ合っていた。
クラウドには、それがついこの間のことのように思えてしまう。
それなのに、自分の知らない所で、いつの間にか5年の月日が流れていた。その歳月は失われたまま、もう戻ることはない。
目の前の幼馴染と話せば話すだけ、見れば見るほど、流れた時間を見せつけられているようだった。
不意に全てに置いて行かれたような錯覚を覚えて、クラウドは知らず乾いていた喉を酒で潤す。
「ねえ、聞いていいことかわからないんだけど…ザックスはどうして今回参加してくれないの?」
「……え?」
あの人も一応、ソルジャーだったよね。と、ティファが首を傾げた。
心ここにあらずだったクラウドには、その内容が瞬時に理解出来なかった。
ティファの言葉に、あぁ。とだけ返して内容を反芻する。
今回のミッションに、ザックスが不参加な理由。果たしてどう言ったものだろうかと、しばしクラウドは思案した。
「……これくらいの任務なら、俺一人で十分だと思ったから。あいつには他の仕事を頼んできた」
「………そっか」
数瞬の間を置いて、ティファが頷いた。
上手く、はぐらかせただろうか。
「…コレ、美味しかった。ご馳走様」
「……うん。また会議が終わったら皆の料理を作るから、それも食べていって?」
クラウドは頷いて、席を立った。これ以上追及をされても、それに答えることが出来ないのは、自分が一番よく理解していた。
切なげに笑うティファの顔は見なかったことにして、クラウドは逃げるようにアバランチの基地へと続くエレベーターを降りていく。
あの日の忌まわしい出来事は、未だクラウドの中でしこりとして残っていた。
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