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FF7小説 読むにあたっての注意書き
ザックスとクラウドが、ニブル屋敷以降、神羅の手から上手く逃れたことを前提とした本編沿い小説
なので、ザックスは生きています。
ちなみに二人はまだ出来ていません。
管理人の本編の進み具合で進めていけたらいいかなあと思いつつ。
言わずもがな、ザックラです。
以上! OKの方のみ続きからどうぞ!
今回の任務の爆発で、結構な被害が出ていたということを、後にアジトのテレビで知った。
バレットの部下の一人であるジェシーが頭を抱えていたが、このニュースを見たザックスもきっと心配しているであろうことはクラウドにも簡単に想像がついた。
今は任務中だから消してはいるが、多分PHSには何件もメールが入っているに違いない。
バレットがそのニュースを見ながら、ぽつりと呟いた。
「今日、俺達が戦った相手にソルジャーはいたのか?」
クラウドは無言で首を振った。
ソルジャーがいたのなら、きっと無事では済まなかった。
ザックスと手合わせをしたことがあるクラウドだからこそ、わかる。
例えザックスがソルジャーの中で1、2を争うソルジャーだったとしても、きっと他のソルジャーだって一筋縄ではいかない。
戦闘のエキスパート、化け物とさえ呼ばれているソルジャー。
「もしソルジャーと戦っていたら、あんたたちが生きていられる保証はなかった」
きっと自分だって、自身の身を守るのが精一杯だったろう。と、クラウドは思う。
いくらザックスに強いと言われても、実践経験が乏しいクラウドに不安要素がないとは言い切れない。
それっきり黙り込んだクラウドに、バレットが痺れを切らしたように地団太を踏み始める。
「確かにお前は強い。恐らくソルジャーってのは皆強いんだろうさ」
バレットの唸るような声が、物思いに耽るクラウドを現実に引き戻す。
クラウドが視線を向けると、バレットはぎらついた視線でクラウドを睨みつけていた。
「でもな、お前は反乱組織アバランチに雇われてる身だ。神羅の肩を持つんじゃねえ!」
その言葉に、クラウドの肩がぴくりと揺れる。
拳を握りしめ、瞳の蒼色が剣呑な色を帯び、揺らめいた。
「神羅の肩を持つ? 俺はあんたの質問に答えただけだ」
今までのことを思い返しそうになり、慌てて振り払った。
今ここで考えるべきことではないと、拳を握りしめる。嫌な汗が背中を伝う。
「……俺は上で待っている。報酬の話がしたい」
「待ってクラウド!」
駆けつけたティファが、クラウドの腕を掴み引きとめた。
バレットが苛立ったように、声を荒げて抗議する。
「ティファ! そんなヤツ放っておけ! どうやら神羅に未練タラタラらしいからな!」
「…黙れっ! 俺は神羅にもソルジャーにも、未練はない!」
振り返り、バレットを青い炎が灯った瞳で睨みつける。未練がないのは本当のことだった。
それ所か、出来れば未来永劫関わりたくない。生活が苦しくなければ、いくら破格の報酬でも、こんな仕事に頷きはしなかった。
ティファが怒鳴り声に驚き、びくりと体を震わせてクラウドの腕から手を離した。
「だが勘違いするな、お前達のアバランチの活動にも、興味はない!」
吐き捨てるように言って、凍り付いたように固まったその場を後にする。
エレベーターに乗り込むとティファが何かを言ったような気がしたが、今のクラウドにはそれを気にする余裕がない。
知らず呼吸が荒くなる。胸元を握りしめるように掴んで、荒い呼吸を吐き出して落ち着かせようと試みたが、駄目だった。
記憶がさざ波のように、まるで一方的に押し寄せてきそうな気がして、クラウドは気が気ではなかった。
気を紛らわせるためにポケットに手を突っ込むと、PHSが手に当たる。電源を入れると、すぐにメールの着信を知らせるランプが光った。
このPHSに連絡をしてくるのは、勿論一人くらいしか思い当たる人物がいない。
無性にその人物に会いたくなって、クラウドは奥歯を噛み締めた。
PHSを開いてみると、そこにはやはり想像通りの人物からのメールがずらっと並んでいる。
『今どこにいる?』
『ニュース、見た。作戦は上手くいったっぽいけど、怪我とかしてないか? 無茶はするなよ』
『一息ついたら連絡してくれ』
何通か開いてみても、それは大体同じような心配のメールだった。
そこでようやく、いつの間にか詰めていた息をやっとの思いで吐き出すことが出来た。
この男はいつもこうして、自分の心配ばかりしている。クラウドは情けないザックスの顔を思い出した。
それだけで、心の中にあったわだかまりが僅かに氷解する。
エレベーターが止まり、クラウドは外の空気を吸おうと足を向ける。
すぐさまエレベーターがまた動きだすと、店を出る手前でティファが慌てて駆け寄ってきた。
「クラウド、お願い。力を貸して!」
「……ティファ…悪いけどさ」
必死に言い募るティファには悪いと思えど、どうにも自分はバレットと相性が悪そうだと首を振る。
僅かに眉を顰めたティファが「あの日の約束」のことを言い出して、ぎくりとクラウドは体を強張らせた。
「俺は…英雄でも有名でもない。約束は…守れない」
その約束を、覚えていないわけがなかった。あそこから全て始まったといっても、過言ではないのだから。
ただ、自分はその約束を守ることができない。
ティファの瞳が縋るような色を帯びて、目の前の幼馴染を見つめていた。ソルジャーになった、幼馴染に。
クラウドはティファの目を直視することも、期待に応えることもできそうになかった。そして、結局また視線を逸らすことしか出来ない。
彼は己の愚かさと非力さを呪う。かといって、最初が違っていれば未来も変えられたのかといえば、それも違っただろう。
どうしようもなく英雄に憧れていた。遅かれ早かれ、自分はきっとソルジャーに志願していたのだろう。
時期がずれていたら、もしもあの時、故郷へ行く任務に駆りだされなければ。
そこまで考えて、クラウドは瞳を閉じた。そんな「もし」を、幾度想像しただろう。
ただ虚しいだけのそれを、自分は何度繰り返すつもりかとその都度、後悔ばかりしているというのに。
ティファは相変わらず真っ直ぐにクラウドを見つめ、必死の説得を繰り返す。
「でも、子供の頃の夢を実現したでしょ? ちゃんとソルジャーになったんだもの」
「……俺は…」
ティファの言葉に、なんと言っていいのか、クラウドにはわからなくなった。
全てを説明する気はない。それを口にすることすら、今のクラウドには恐ろしかった。
思い出すだけで体が震えるそれを、どうして他人に言えるだろう。
「まあまあ、あんま苛めてやらないでくれよ、ティファ」
後ろの扉が開いたかと思えば、いきなり腕が伸びてきてクラウドを捕えた。
暴れようとしたクラウドを意図も簡単に抑えつけて、その腕の持ち主は笑う。
「こーら、暴れるなって。俺だ、俺」
「……ザックス?」
「そうだ。あんまり返信ないもんだから、驚かせてやろうと思って来てみた。怪我は…ないみたいだな」
ニカッと人好きのしそうな笑みを浮かべた男の顔に、やっとクラウドはそこで安堵した。
同時に、またどうしてこのタイミングで現れるのだろうとクラウドは小さく息を吐く。
「悪い、ちょっと立て込んでて、返信出来なかった」
「わかってるって、そんな遠くねえし、ちょっとランニングがてら来てみただけだしな」
クラウドの髪の毛をぐしゃぐしゃと撫で回し、ザックスが朗らかに笑う。
家がある5番街から、7番街まで走ってきたという。物好きなことだとクラウドはじっとザックスを見上げた。
勿論、それが優しい嘘だということも、クラウドにはわかっていたのだけれども。
「……ごめん」
「何謝ってるんだ? 俺がやりたくてやったんだから、お前が気にすることじゃない」
な? と、顔を覗きこまれて、クラウドも素直に頷いた。
「うわ、なんだ、どうしたお前? なんか悪いもんでも食った? 素直すぎてちょっと、いや、かなり気持ち悪いな」
「……っ!! 悪かったな、どうせ俺は!」
「取り込み中の所悪いんだがよ」
食ってかかろうとするクラウドをザックスが止めるよりも早く、バレットの声が部屋に響く。
ティファが驚いたように目を丸くしている傍らで、バレットが何かを投げてよこした。
それをクラウドが受け取るよりも早く、ザックスが手を伸ばして受け取った。
「約束は約束だからな」
「ああ、確かに受け取った。で、次のミッションの依頼はあるのか?」
「えっ?」
「ザックス?」
ティファとクラウドが同時に声をあげ、ザックスの顔を見た。
「流石に毎日ぐうたらしてたら体も怠けるからなー、たまには剣も使わねえと」
「…ちょ、あんた何言ってるんだ、ザックス!!」
「もしあるんなら、倍額でどうだ? 流石にこっちにも、色々と危険な条件なんでね」
クラウドの抗議に聞く耳も持たず、ザックスはどんどん話を進めていく。
バレットが憤慨したように何かを呟くのを、ティファが諌めた。
何事かを囁き合う二人を横目に、クラウドがザックスの胸倉を掴んで揺さぶる。
「わかってるのか?! 俺達が行こうとしてる所は…っ!」
「俺のがちょっと有名だったってだけで、条件はあんま変わらねえと思うけど…? それに、俺が今のお前の状態に気付かないとでも思ったか? お前、顔色が悪い所の話じゃないぞ」
「……っ!」
顎を掴まれて上向かされて、ザックスの強い瞳にクラウドは射抜かれた。
こうなったザックスは、最早何を言ってもクラウドの言うことは聞かない。
「無茶はするな。辛かったら言え。散々言ってきたろ? 大丈夫、俺だって多少変装くらいしてけばなんとかなるよ」
「でも…っ!」
「それに、二人を雇うとなれば、向こうだってそれなりの金額を提示してくるだろうし?」
そんな問題ではないとクラウドが口を開きかける前に、バレットが足音荒く階下へと向かう音がする。
階下に降りようとする間際、渋々といった風に彼は振り向き、口にする。
「2000だっ!!」
「んー、今度は二人だからな、2500でどうだ? 今回はそれで請け負ってやるよ」
「2200に負けろ! それ以上はこれっぽっちも出せねえ!」
「へえへえ、りょーかいしました」
バレットは話はそれっきりだとでも言うかのように、階下へと飛び降りた。
その後姿を見送ると、ティファがおずおずとザックスとクラウドに視線を向けた。
「あの…ありが、とう?」
「うん? こっちも仕事だからな、気にするな」
こうして話が決まった。
クラウドは一抹の不安を抱えながら、溜息を吐く。
こうなれば、何がなんでも気付かれないような変装をして貰うしかない。
ティファと2,3言話していたザックスが、クラウドの元へと戻ってくる。
「明日朝早いみたいだから、今日はここに泊るか」
今から戻るのも面倒だしな。と、ザックスは己の立場をわかっているのかいないのか、呑気に寝床の話をし始める。
「あんた、わかってるのか? 相手は」
「わかってるよ。でも、そんな状態のお前を一人でなんて行かせられねえ」
「俺は…平気だって言ってる」
クラウドが唸るように呟いた言葉に、ザックスは大仰に溜息を吐いて見せた。
肩を竦めて、ザックスは店にある鏡を指差す。
「鏡、見てみるか? お前さ、さっきから笑えるくらい酷い顔してる」
「それはあんたが…っ!!」
「お前がなんと言おうと、もう話は決まった。俺も行く。お前は俺に、背中守られておけよ」
その変わり、俺の背中はお前に預けたからな。と、ザックスは笑った。
笑っていても、瞳の奥にあるものは揺らがない。彼は自分の言ったことは、余程のことがない限りは捻じ曲げない。
今までの付き合いと経験上、クラウドはもう自分には彼の意思を曲げることは出来ないと察した。
どこか晴れない気持ちを抱え、クラウドは俯く。
「……心配性なんだよ、あんた」
「お前が自分のことを気にしなさすぎるから、これくらいで丁度いーの」
俯いたクラウドの背中を叩いて、ザックスはそのままクラウドの背中を押しながら寝床へと向かう。
そのままティファにおやすみと挨拶をすると、階下に二人して降りていく。
「あんま考えすぎるなって。俺がいるだろ?」
「………そういうわけには」
「ほら、また眉間に皺寄ってる。もうこの話はこれで終わり! 疲れてるんだよ、お前」
階下の空いたスペースにクラウドを座らせると、ザックスも横に座った。
ティファが用意してくれた軽食を無言のまま平らげ、ザックスは一度欠伸をする。
用意してあった毛布でクラウドを包むと、自分も同じように毛布に包まってそのまま寝の体制に入る。
「動いて食ったら寝る! お前も今日は疲れただろうから、早く寝ろよ」
「……いっつも強引なんだ、あんたは」
「そこがイイだろ?」
「…ばか」
ぷいとザックスとは反対の方向にそっぽを向いて、クラウドはそのまま瞳を閉じた。
「…おやすみ、クラウド」
「…………おやすみ」
数拍遅れてから小さな声で呟かれた言葉に、ザックスは破顔した。
やがて訪れた束の間の休息に、二人は寄りそうようにして、睡魔へと身を委ねた。
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