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プラネタリウム めっちゃココマでしたー。
そんなわけで滾ったココマ。
感想?はまた後日にでも

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【流星フレイム】
「暗くなってきたのにそんな崖の淵にいたら危ないよ」
 そんなココさんの柔らかい声が聞こえて、僕は顔だけで振り返った。ココさんがブランケットを持って、僕の背後に立っている。ココさんは小さく息を吐くと、僕の横に腰を降ろして僕の方にブランケットを掛けてくれた。
「ほら、夜はまだ冷えるから、これ」
「ありがとうございます」
 本当に過保護だなあと思う僕の横で、ココさんは黙ったままだ。おや、と僕は思う。ここに座るのを止めさせにきたわけではないらしい。
「何を見ていたんだい?」
 暫くの沈黙の後、ココさんは静かにそう切り出した。僕は小さくその問いに笑うと、頭上を指差して笑った。
「星、ですよ」
 頭上に輝く満天の星。きらきらと輝くそれは本当に少しずつ移動しながら、その光を地上に降り注いでいる。
 ココさんの家からはよく星が見える。崖の上に立つココさんの家の周りは、当然ながら真っ暗だ。人工の明かりに遮られないこの場所では、都会なんかで見るよりももっとずっと多くの星が見えていた。
 ココさんは僕の指差す場所を眺め、僕と同じ場所を眺める。僕もココさんの横顔から視線を外して、頭上の星を眺めた。綺麗だと思うと同時に、ほんの少しだけ、そこに切なさが滲んだ。
「今見えている星が、ずっと昔の光だって言ったら、君は信じる?」
 ココさんが見上げたままねぽつんとそんなことを呟いた。僕は見上げていた視線をココさんへと向けて、首を傾げる。その話は僕も聞いたことがある。
「今僕らが見ている星は、もうそこにはないのかもしれない」
 僕が言うと、ココさんは頷いた。ココさんの目に星明かりが煌めいたように見えた。
「そう、何万、何千キロと離れている場所から届く光。もうそこにはないかもしれない星。ちょっと、切ないよね」
「そうかもしれませんねえ、でも」
 僕はまた頷いて、指でカメラでも構えるかのように、頭上に四角い窓を作る。指のフレイムの中に、切り取ったような星空が光り輝いて見えた。
「あの星はココさんに見て欲しくて、一生懸命光っていた星なのかもしれませんよ」
 それはまるで、僕のように。
 届くかもしれない。だけど、届かないかもしれない。
 いつココさんに届くのかわからないそんな光のような想いを、僕はココさんに向けて飛ばしていた。
 僕は指で作ったフレイムを頭上から降ろし、今度はそのフレイムの中にココさんの横顔を収めた。フレイムの中にいるココさんは、僕へと視線を向けると柔く微笑んだ。
「小松君に見て欲しかったのかもよ」
「ここで見ている僕たち二人に、かもしれません。そう思うと、なんだか奇跡的なことのように感じられますね。もしかしたらあの星は、僕らに見られることなく消えていたかもしれないってことでしょう?」
 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。そんな星の話を交わしながら、僕らは密かに笑いあう。
 だけど今、僕らの頭上に届いている明かりは確かにそこに存在している。僕の想いも、この胸の中にちゃんと存在している。
「奇跡、か」
 ココさんの手が僕のフレイムを降ろさせた。意外と温かなその大きな手は、僕の手をすっぽりと包み込んでしまう。僕がその手を僅かに握り返してみると、ココさんの目に温かい色が浮かんだ。
「君が生まれて、僕が生まれて、この世界に生きて、ここに辿り着いたこと。小松君に巡り会えたこと、小松君とこうして過ごせること、その一つ一つ、一瞬一瞬全てが、僕にはそれこそ奇跡的なことなんじゃないかって、そう思うよ」
 僕の手を額に押し当てて、ココさんはまるで祈るようにそんな言葉を紡ぐ。静かで真っ暗な辺りに、ココさんの優しい声音が響いていく。
「ココさん」
 僕はココさんの言葉にぐっと胸を締め付けられるような気持ちを覚えた。なんとか絞り出した声は掠れていて、んだかちょっと情けない声になってしまった。
「でも僕にとって、君は眩し過ぎるくらいだ。あの星たちのように眩しくて、触れたら消えてしまいそうで、怖くて」
「僕は星じゃないですよ」
 わかってるよ。
 ココさんはそう言って、僅かに笑みに苦いものを滲ませた。ココさんの手が僕の手を離そうとしたのを捕まえて、今度は僕がココさんの手に触れる。
「僕、星じゃないから」
「……うん?」
 ココさんが少し驚いたように目を見開く。僕の言葉に首を傾げたココさんに笑い掛けて、今度は僕がその手を自身の額に押し当てた。
「だから好きな人には触れたいと思うし、この想いがいつか届けばいいなって、いつも願ってます」
 その目を真っ直ぐに見つめて、僕らの頭上に輝く星のように想いが届けばいい、と。
「……小松君」
 ココさんの声に僕は顔をあげる。ココさんの目に、星の明かりはもう見えなかった。もうちょっと見て痛かったのに、残念だな。と、思っている僕の頬に、ココさんの指先が触れた。
 唇をなぞられて、視線を伏せた僕の唇に少ししてから触れた温かな感触。
 星の明かりはもう見えなかったけれど、僕がココさんへと飛ばした想いはどうやら無事にココさんへと届いていたようだった。
 僕らがこの世界に生まれて、出会って、こうして触れ合えること。同じ空を見て、同じ場所に立ち、星空の下でキスをすること。
 確かに何もかもが、奇跡的なことのように僕には思えた。
 目を開くと、気恥ずかしさに僕らは笑い合う。静かな星空の下で、僕らはまた、星のように奇跡的に、唇を触れ合わせた。
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