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続きからはリーマンパロの続きです。
一応完結。
ちょっと長め


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 シャワーの音を聞きながら、僕は緊張に身を固めていた。僕に先にシャワーを進めたココさんは、僕があがってくると慣れたようにスーツを脱いで、浴室へと 向かってしまった。僕のスーツよりもうんと高そうに見えるスーツだ。最もココさんは一流の営業だから、当然かもしれなかった。僕は会社にくればコックコー トに着替えてしまうから、会社に来る時は本来私服でも問題ない。だけど、食品を扱う僕らの会社では、料理長の僕は料理のプロとして唐突に呼び出されて会議 なんかが入ることもなくはないから、一応念のために毎日スーツで通っていた。
 スーツが二つ備え付けのクローゼットの中に仕舞いこまれると、その体躯差とスーツの差といったらなかった。
 僕は息を吐くと、心もとないバスローブ一枚を纏い、所在なげに辺りを見渡した。こんな所にくるのは正直初めてで、どうしたらいいのかわからない。
 浴室だって全身鏡張りで落ち着いて入ることなんて出来なかったし、室内にも痛いことをするための設備や、俗に言う大人の玩具が自販機形式で販売されていた。
「うー、テレビでも見てよ」
 僕はリモコンを手に取って、テレビの電源を入れて見る。テレビがぷちんと音を立てて、少し暗い部屋には眩しいくらいの光を灯した。
『ぁ、あ、ああっ! あんっ、あっ!』
 そこから聞こえてきた声に、僕はぎょっと目を見開く。女の人が男の人に組み伏せられて、あらぬ所にあらぬ物を突っ込んで喘いでいた。その苦悶の表情は、とても悩ましく僕には見える。 
「えっ、ええ?!」
『やらしいね、気持ちイイの?』
 女の人に突っ込んだいわゆる大人の玩具を激しく抜き差しする手が、荒々しい吐息を隠すこともせずに告げる。僕は慌ててチャンネルを変えた。
 次にぱっと映し出されたのは今度は猫のコスプレをした女の子だった。けれども、その衣服は今や殆ど脱げて、白濁とした液に塗れて恍惚な笑みを浮かべている。
『ご主人さまぁ』
 甘ったるい声が部屋に響き、僕はその音の大きさにぎくりと体を強張らせた。ごくりと唾液を飲み込んだ僕は、頭を振ると大慌てでテレビの電源を落とした。
「ふ、普通のテレビじゃ、ない」
 このテレビは一体なんなんだ。と、僕はリモコンを枕の下にせっせと隠した。こんなもの、ココさんと見られるわけがない。
 ふと、枕の下にリモコンを隠し終えた所で、ベッドの枕元にテレビのリモコンとは違う、何かの操作パネルがあった。文字は掠れていて、少し読み辛い。僕はきょろりと辺りを見渡す。ココさんが浴室から出てくる気配は、まだなさそうだ。
 そして僕は、やっぱり男だった。このホテルに興味がないと言えば、勿論嘘になるのだ。ここぞとばかりに部屋を見渡し、ココさんがいない内にと、色々と手に取って見てみる。
「……これは消……灯、かな?」
 文字の上についている小さなボタンをぽちっと押してみると、ピッという音と共に電気が消えた。やはり、部屋の明かりらしい。
「じゃあこれは冷暖房かな?」
 冷と房の間は掠れて読めないが、多分そうだろうと操作すると、やはり部屋のエアコンが作動した。他にも音楽を流したりなど、色々な機能がついているらしかった。
「へえ、面白い。あっ、じゃあこれはなんだろ?」
 そこには「鏡」と書かれているようだった。どこかからドレッサーでも出てくるのだろうかと思って僕はぽちっとそれを押してみた。何も起こらない。首を傾げて部屋を見渡し、背後を見た僕はぎょっと体を強張らせた。
「わ、わーーー!? こ、コ、ココ、コ、ココさんすいませんっ!!」
 僕の背後には、水に濡れた色男が、そこで頭を洗っていた。驚きに身を強張らせる僕に、けれどココさんは何も言わない。寧ろ、何も知らないかのようにその綺麗な髪の毛を洗っている。
「……え?」
 近寄って見てみると、それはどうやらマジックミラーのようになっているらしかった。ココさんの裸体が、僕の目の前に余すことなくそこに晒されている。
「わ、わー、凄い筋肉……!」
 前にプールで泳いでいるのだという話を聞いたことがある。疑うことはしなかったけれど、その体を見て僕はうっとりとその羨ましい肉体に見惚れた。
 水に流された泡が綺麗な筋肉の線を沿って流れ落ちていく。首から肩を伝い、腕や胸に腹筋を通り、そして……
「……ッ、」
 僕は顔にぱっと熱が溜まるのを感じた。こんなもの見ちゃいけないと思うのに、僕の目は釘付けになったまま動けない。ごくりと知らず溜まっていた唾液を飲み込んだ。さっきの女の子なんか目じゃないくらいの色気がココさんから醸し出されている。
 髪の毛から滴り落ちた雫がココさんの体に落ちて、跳ねた所さえ見てとれた。ココさんは頭についた泡全てを 洗い落とすと、髪の毛を掻き上げてその綺麗な目を真っ直ぐに僕に向けた。
 どき、と跳ね上がる心臓。ココさんがふわりと僕に笑い掛けたように見えたのは錯覚だろうか。確かめる間もなく、ココさんは立ち上がる。どうやらもう、そのまま上がるらしかった。
「わ、わ、やば! やばい!」
 僕はぽち、と先程押したスイッチを押した。それと同時に、鏡だったそこがなんの変哲もないただの壁へと変わった。散々見ておきながらあれだけど、全くもって悪趣味な作りだと僕は思う。
 あぁ、だけど、もし、ココさんがこれを使っていたら? なんて、ふとそんな疑問が思い浮かんだ。や、ココさんはそんな興味本位で色々とそこかしこを触るなんてことはしないだろうけど。
「……まだ起きてたんだ」
 ココさんが頭を拭きながら、バスロープ一枚を身に纏って浴室から出てきた。
「えぇ、まぁ……先に寝るわけには……」
 何気なく返答しようとした僕は、ココさんのその姿に目を見開いた。腰帯びを緩く止めているだけのそこから上はやや肌蹴て、腹筋から首元までが丸 見えた。歩く度に裾がちらちらして、その逞しい足まで時折覗く。僕はまたごくりと唾を飲み込んで、ココさんの体から視線を逸らした。
「先に寝てても良かったのに……」
「まさかそういうわけにはいきませんよ」
「小松君?」
 ココさんの声に、僕は「はい?」と声だけで答えた。ぎしりと鳴るスプリングに、思わずびくりと体が跳ねてしまう。ココさんの近付く気配が、した。
「……どうしてそんなに緊張してるの?」
「こ、こんな所、初めて、で!」
 僕は口元を抑えて、なんとか裏返りそうになる声を堪えた。先程からずっと動揺し続けていたせいか、心臓はばくばくと音を立てたまま、治まる気配が見えない。
「何もしないって、言ってるのに?」
「……っ?!」
 ぼふんと音を立てて僕の体がベッドに沈みこむ。ぐるりと回った視線に目を白黒とさせていると、視界いっぱいにココさんの顔が見えた。
「こ、ココさんっ?」
「それとも、何かしてほしい?」
 くつり、と意地悪げな笑みを浮かべるココさんの顔。仰向けになった僕の顔の両横に、ココさんの大きな手が置かれていた。
 目を見開いて固まったままの僕に、ココさんは少し寂しげな笑みを浮かべる。
「何も言わないなら、悪戯しちゃうよ?」
「……っ、ん!」
 ココさんはそう言うと、僕の首筋にかぷりと噛みついてくる。びくんと体を竦ませた僕に、小さく笑う声が聞こえた。
「かわいい」
「……っ、な、なっ?! ちょ、ココさ……っ!」
 何を言っているんですか。そう言おうとする前に、ココさんの大きな手が僕の頬を掴んだ。熱を灯した体と同じくらいに、ココさんの掌も温かかった。
「君が好きだ」
「……っ?!」
 一体なんの冗談だろうか。僕は体を硬直させたまま、ココさんの瞳の中に冗談だと思われる色を見つけようとした。けれどそれはどこを見つめても真摯な色を湛え、僕に真実しか告げていないことを告げている。
「ココさん……?」
「脈なんてこれっぽっちもなさそうだったから諦めようと、ただの良い仕事仲間であろうと頑張っていたのに……そんな表情されたら、もう無理だよ」
 それは一体どんな表情なんだろうか。そう問いたかったけれど、ココさんのあまりにも寂しそうな顔に聞くことなど出来なかった。
「何もしないなんて、嘘だ。いや、嘘にするつもりなんてなかった。だけど、やっぱり、好きな人とこんな個室で、二人っきりなんてチャンス、何もしない方がどうかしている」
 どうかしていたのはきっと、数十分前の僕のことだろうね。と、ココさんは苦笑を浮かべて僕を見つめた。それから「嫌なら僕を拒んでくれ」と、額に口付けられた。
「今ならまだ間に合う。君を傷つけないで済む。君を傷つけたくないから、僕は君に拒絶されたら、素直に身を引くよ。明日からはいつも通り、何もかも元通りになる」
 ココさんの優しさを浮かべた眼差しが僕に注がれる。拒めば明日からいつも通りの関係に、では、拒まなければ?
 僕はココさんの顔を見上げた。ココさんがそんな気持ちで僕の横にいたことなど、僕は今の今まで知らなかった。ならば僕は、ココさんのことをどう思っているのだろう。
 本来であれば、同性のイチモツなんて見たって気持ち悪いと思うのが多分、常なんだろう。だけど、僕はさっき、あの時……。
「小松君? 黙ってちゃわからないよ?」
 ココさんの柔らかい声が耳に落ちてくる。僕はココさんを見上げて、ぐっと唇を噛んだ。
「ココさん、ココさん」
「うん?」
 他には誰もいないのに、まるで大観衆の前でスピーチするような緊張感に苛まれているようだった。僕は激しい喉の渇きのようなものを覚えながら、裏返りそうになる声を必死に抑えて言葉を自身の声に乗せた。
「……僕、僕、どうしよ。嫌じゃ、ないんです」
 ココさんの目が見開かれた。好きか嫌いか、そう問われたら好きに決まっている。だけどそう言った類の好きかどうかはまだわからない。だけどココ さんに触れられるのは嫌じゃないし、気持ちがいい。ふわふわとしたこんな気持ちになるのは、きっとココさんだからだと僕は頭のどこかで理解していた。
 この心地良い気持ちが、嬉しいと思う気持ちが、その感情であるなら、僕はきっと。
「僕も、ココさんが好き、です」
「小松君……っ!」
 あとはもう、言葉なんていらなかった。重ね合わせた唇から想いが溢れて、後は互いの感情を貪るように、舌を絡ませる。
「……ふ、んんっ」
 ココさんの指先が僕の体をバスロープの上からなぞる。そのどことなくいやらしい手付きに、僕の体はぴくんと震えた。
「ごめん、告白して返事を貰ってすぐで、がっつき過ぎだとは思うけど、今すぐ君が欲しい」
 眉根を寄せて何かに耐えるココさんの表情は、僕が今まで見たココさんのどんな表情よりも色っぽかった。その頬を指先で撫でて、僕は瞳を細める。
「……僕も、ココさんが欲しい、です」
「……っ、煽るのが上手いね」
 そのまま僕は、またココさんに口付けられた。貪るようなキスに翻弄されながら、ココさんの手がバスロープの合わせから入り込んでくる。腰帯びは いつのまにか解け、はらりとバスロープが肌から滑り落ちた。自身の体が曝け出されることに羞恥を覚えて、僕は両腕で体を隠すように交差させた。
「隠さないで、小松君。全部見たいんだ」
「……っ、だ、だって!」
 鼻の頭にココさんの唇が落ちてくる。柔らかいふにりとしたその感触に、僕はぴくりとまた体を震わせて硬直してしまう。
「見せて」
 その一言に、抗えよう筈もなかった。僕はまるで魔法にでも掛けられたかのように、ゆるゆると腕を外す。ココさんは「良い子だね」と呟いて、僕の体をゆっくりと確かめるみたいに、掌でなぞり上げた。
「ふぅ、んっ!」
「凄い早い反応だね……」
 ココさんがどこか感心したような声音で呟くのに、羞恥で頬に更に熱が溜まった。ココさんの唇が首筋に口付けて、そこを僅かに吸い上げる。ちくりとした痛みに、僕は目をぎゅっと閉じた。
 ゆっくりと手の後を辿るように、ココさんの唇は段々と下降していく。胸を弄り、腹を辿り、そして僅かに反応を示し始めていたそこへと向かって、一直線に。
「……っ?!」
「ふふ、ここもちゃんと反応してくれてる。気持ちいいんだね」
 ココさんの言葉に、僕は益々羞恥を煽られる結果になった。男なんて即物的な生き物なんだから仕方ないでしょうって変に開き直りかけたけれども、そもそもこの人に口で勝てた試しがない。僕はこれ以上変な墓穴を掘らないように、黙っておくことにした。
「にゃっ?!」
 バスロープは完璧に肌蹴られて、パンツも抵抗の間もなく脱がされた。ぷるんと現れたそれに、ココさんの喉仏がごくりと上下するのが見えた。
「ココ、さ……っ」
「あぁ、凄く可愛いよ、小松君」
 夢にまで見た光景だ。そんなことをうっとりと呟いたココさんは、躊躇うことなく僕のそこを口に含んだ。驚きに身を強張らせる僕のことなんかお構いなしに、ココさんは僕のそこをじゅるじゅると吸い上げる。
 初めてのその行為に、僕の目の前には星が飛び、太股は痙攣するようにびくびくと震えた。
「ひ、ぃあ、あ、あっ!」
 それはすぐに訪れた。堪えしょうがないと言われても仕方がないくらいの速さで、僕はココさんの口の中に射精してしまっていた。罪悪感よりも強く僕の中を突き抜ける快楽に、僕はびくびくと体を震わせる。
「ふ、ぁ、あー……」
 ココさんの喉がごくごくと鳴っている。その意味を理解するのに、数秒の時間を要した。僕のそこから残滓までも吸い上げて、最後にオマケとばかりに舐め上げたココさんは、満足そうににこりと僕に微笑みかけた。
「うん、濃厚でとても美味しかったよ。最近忙しそうだったもんね、一人で抜いてなかったんだ?」
「な、何、言って……そ、それにあんなもの、飲む、なんて!」
 はたと我に返った僕は、ココさんに抗議の声をあげる。ココさんはにこりと笑うと、「そんなに元気ならまだいけるかな」と、唐突に僕の後ろの、あの穴にぬるりとした何かを塗りつけ始めた。
「ふぁ!? なに?!」
「ローションだよ」
 あぁ、ローションか。と、僕は先程見渡した室内の備品を思い出して、納得する。そうか、そういえばそんなのもあったなあ。
 そう思ってぼんやりしている僕の後ろに、またどっぷりとローションが追加される。冷たいそれに「ひぁ!?」と、思わず声をあげた僕に、ココさんはまた興奮したように息を吐き出した。
「可愛い、可愛すぎて、食べてしまいたい」
 ココさんは言いながら、後ろを慣らしながら胸に口付けてくる。ねっとりとと絡みつくように、時々鋭い痛みを伴いながら僕のそこを食むココさんに、僕はぶるりと体を震わせた。
 最初はなんともなかった筈なのに、今、ココさんに弄られているそこはじわじわと僕の腰に重く溜まる何かを残していくようだった。
「にゃ、ぁ、あ!」
 ココさんが僕の様子を見るように、ちらりと上目遣いで僕を覗き込んだ。その色っぽく濡れたような黒い瞳に、僕はぞくぞくと体を震わせる。匂い立つように色気に翻弄されながら、僕はぎゅうと目を瞑った。
「ふぁ?!」
 ココさんの指が、ある一点を突く。じわじわとした感覚を重く腰に伝えてくるそれは、突かれる度に得体の知れない未知なる快感を僕の頭に伝えてくる。
 神経を通り、ぴりぴりとしたような感覚。制御の効かなくなった体は、ただココさんに翻弄されていた。
「ここが小松君のイイトコロ、か」
 ココさんがまるで、新しい玩具でも見つけた子供のような表情で、とても嬉しそうにそう言った。暫くそこを指先で突かれながら胸を弄られていると僕の中心は再び頭を擡げ始めて、涙を零す。そのいやらしさに、泣きたくなった。
「もういいかな」
 ココさんはそう言って、にやりと笑うと僕の足の間から指を引き抜く。ココさんは自身の体に纏わりつくバスロープを鬱陶しそうに脱ぎ捨てると、真っ裸になった体をぴっとりと僕に寄り添わせた。
 ココさんの温もりが心地良い。ぎゅうと抱き締められると、なんだか酷く安心した。
「好きだよ、小松君」
「ぼくも、です……」
 どきどきと心臓が高鳴る。甘く笑ったココさんは、僕の頬に、瞼に口付けると、ローションを再び手に取って自身のその昂っている中心に塗りつけた。
 先程鏡越しに見たココさんのそこは、先程とは似て非なるものへと変化していた。緩く立ちあがったそれが、まさに今僕を貫こうと、待ち構えているように見えた。
「ぁ、あ!」
「いい? 小松君」
 何が、なんて、もうここまできたら聞くのも野暮というものだろう。僕は音を立てて生唾を飲み込んだ。僅かにこくりと頷くと、ココさんの目が嬉しそうに細められた。
 ずるい、と僕は思った。だって、その仕草一つにすらどきりとさせられてしまうのだから。
「いくよ、小松君……」
「は、い……っ、ぁ、あ!」
 貫かれる時に感じるであろう筈の痛みは、驚くことに殆どなかった。宥めるようなココさんの口付けを顔中に落とされながら、僕はゆっくりと体の中 にココさんを受け入れていく。痛くはないけれども、それでもやはり、圧迫感はある。はくはくと息を吐く僕の目の前で、ココさんは眉間に皺を寄せてじっと何 かに耐えているようだった。
「ひ、ぃあ、あ!」
「ごめん、痛い、よね……息、ゆっくり吐いてっ」
 僕は緩く首を振る。僕なんかよりも、大分ココさんのが痛いんじゃないかと、そんなことをふと考えた。それが体が力んでいるせいだと気付いた僕は、ゆっくりと深呼吸をして体の力を抜くことに専念してみる。
「ふにゃ、ぁ、あ!」
「ふ、全部、はいった、よ」
 ず、と音を立てて入りこんできたココさんのもの。ココさんの腰がお尻に当たって、アレが全部入ってしまったことに僕はどちらかというと驚いた。
 ココさんは後ろの異物感が慣れるまで待つつもりなのか、動く気配はないらしい。今はそれが有難い。
 僕はゆっくりと息を整えながら、枕を掴んでいた手を離して力を抜く。頭を深く枕に埋もれさせた所で、ぷつんとした音が部屋に響いた。
「ん?」
 ココさんがその音に、目をやった。室内に差した光源の元を僕ら二人は見つめる。
『や、ぁあ! もっと、うご、いてぇっ!』
 途端響いた女性の甘く、高い声に僕はぎくりと体を強張らせた。ココさんがぐっと呻いたのが頭上から聞こえてくる。
「や、やだやだっ! ココさ、ココさ、消して……っ!」
「ちょ、小松君! おち、落ち着いて、いた、ちょっと、痛いってっ!」
 ココさんはきつそうに片目を閉じ、何かに耐えるように僕に訴える。きゅうう、と中が締まるのが自分でもわかっているけれど、僕の場所からは丸見えな位置にそのテレビはある。女性が何されているのかは、例え僕の位置からでなくても、一発でわかったろうけど。
「…っ、ひ!? あんっ!」
 突如ココさんが動き始めた。先程指で探られたポイントをココさんのもので擦り上げられて、今まで以上の快楽の波が僕を襲う。自身の声と、女性の声がだぶって聞こえてくる。
「ふ、ぁ! け、けして、ぇ!」
「そんな余裕、ない、よ」
 君があまりにも締め付けてくれるもんだから、余裕が全部持って行かれちゃったよ。と、ココさんは少しふざけたように言う。
「ふふ、どうせなら、楽しめばいいじゃないか」
「ひにゃっ!?」
 僕の体は抱き上げられて、ココさんのものが一度ずるりと抜かれた。そのままココさんはテレビを見える位置であるベッドの淵に腰かけて、僕を後ろから抱え込むように抱き上げた。
「う、そ……っ!?」
 そのまま、僕の抵抗なんかお構いなしなままにゆっくりと引き降ろされていく体。一度そこでの快楽を覚えてしまった僕の体は、浅ましい程に貪欲に、ココさんのそれを飲み込んでいく。
「ひ、ぐ、ぅあ、あ!」
『あぁんっ、もっと、もっとぉっ!』
 テレビの中の女優は品がなく乱れ狂う。女性の中を出し入れされる肉棒は、今、同じように僕の中にも入りこんできている。
「動くよ」
「ちょ、まっ……ぁ、あんっ!」
 僕の制止の声など聞き届けられる筈もない。そのまま動き出すココさんに、僕もまたテレビの中の女性と同じように声をあげる。
「にゃ、ぁあ!」
『いやらしい体だね、もうこんなにして』
 ココさんの指先がまるでテレビの中の声に合わせるように、僕の中心を弄る。そこは涙に濡れ、はしたなくふるふると震えている。
「本当に、いやらしいね」
 僕はココさんの言葉に、かあぁと頬を染めた。きゅううと仕舞った後ろに、ココさんが息を詰める声が聞こえた気がした。
『ほら、いやらしい言葉を言われると、すぐに締まるぞ。君のいやらしいここが』
『あ、ああっ! ちが、ちがぅ、のおっ!』
「や、やだぁ、そんなんじゃ、あ、あんっ、あっ!」
「違くないでしょう? 気持ち良くて堪らないって顔、してるよ」
 誰が誰に犯されているのか、思考が混濁してわからなくなってくる。ココさんに耳を嬲られて、耳元で囁かれて、僕はびくんびくんとまた体を震わせる。
「気持ちいいって、言って?」
 甘えるようなココさんの声に、僕は体を揺すられ、涙を散らしながらぶるぶると体を震わせる。
「ふにゃ、ぁあ! きもち……っ、きもち、いい、のぉっ!」
 ココさぁんと、強請るよう声で僕はココさんに体を擦り付ける。
「……っ、堪らない、よ!」
 僕の言葉に、仕草に、どうやら煽られたらしい。ココさんが腰の速度を速めた。僕らは口付けながら、テレビの音に煽られながら、行為を続けた。
 テレビの番組が変わろうが、何しようが、僕らの行為は最早止まらない。いつしか、テレビの音なんか気にならないくらいに僕らは互いに溺れていった。
「あ、ああっ! ココさ、ココさぁ……っ!」
「こまつ、くん……っ!」
 疲労困憊の僕の中に注がれる、幾度目かわからないそれ。僕はその刺激に体を震わせながら、いつしか意識を深い暗闇の底へと落としてしまっていた。





「……さいあくです」
「ごめんって」
 ココさんに担がれながら、僕はぷっくりと頬を膨らませた。幸い人気のない土曜日とは言え、やっぱり人がいないというわけではないのだ。
 あれから動けなくなってしまった僕は、ココさんによる手厚い看護の後、おんぶされて店を後にするという至極恥ずかしい状況に今、陥っていた。
 ココさんはそれでも嬉しそうに僕をおぶさり、足取り軽く家路へと向かう。
「こんな所、会社の人や近所の人に見られたら僕、死んじゃいます」
「それは大変だ。じゃあ、近所の人に見られないように、僕の家にくるかい?」
 また泊っていけばいいよ。と、にこやかに笑うその笑みに、僕は疑うような眼差しを向けた。その視線を受けたココさんが、はたと困ったように眉根を寄せる。
「……何もしないよ?」
「……うそつき」
 ココさんの言葉には最早信頼性というものがなくなっていた。一流の営業マンらしからぬ大失態だと僕は思う。
「うん、嘘吐いた。何もしないなんて嘘だね、キスくらいは許して?」
 君が大好きなんだ。そう臆面もなく告げるココさんに、僕はぼっと顔を赤らめた。
「そういうことは、外じゃ言わないで下さい!」
「善処するよ」
 あぁ、結局僕はこの人には口では勝てる気がしない。だけどそれでも全然悔しくなくて、それどころか寧ろ、嬉しいのはなぜなのか。
 僕は鼻歌でも歌いだしそうなココさんの温かい背中の上で、静かに一人、笑みを浮かべた。
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