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また見切り発車をしてみるテスト。
パロディですが、基本設定はトリコの世界そのままって感じです。
続くかどうかは気分次第。
怪盗ココさんと小松君の話。




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 かつん、かつんと足音が響く。暗く広い廊下を、僕は一人で歩く。
 酷く体が疲れていた。もううんざりだと、そんな風に思う僕は壁に背中を預けて、ずるずるとそこに腰を降ろした。
 らしくない凡ミスをしてしまった。と、僕は眉間に皺を寄せる。
 その証拠にじくじくと肩が痛んだ。その痛みによって、僕はまた生き延びてしまったことを実感する。
「……ふん」
 ぽたりと聞こえる水音は、毒の混じった血液だろう。忌々しいそれに、僕は小さく舌打ちをした。
 もういっそこのまま眠って、ここを毒の海にしてやろうかとも思ったが、そんな時不意に足音が聞こえてきた。
 ぱたぱたとした足音に耳をそばだて、僕は廊下の奥の暗がりを見つめる。夜目は効き過ぎる程に良い。常人のそれと、比べるまでもない。僕の目は今、明かりなど殆どないにも関わらずはっきりと回りを見ることが出来た。
「あちゃあ、料理に夢中になってたらもうこんな時間だよ! 門限間に合うかな」
 ばたばたと走ってくる小柄な男は、何やら小さなリュックを背負って一生懸命走っている。門限と言っている所から見るに、このIGOの職員なのだろう。
「…………あ、っと?」
 その男が、僕の目の前でぴたりと止まった。消命を使い忘れていたことに、今僕は気付いた。らしくもない凡ミスに、僕は再び舌打ちをした。
「大丈夫ですか?」
 明かりは殆どないとは言え、あるにはある。男は目をこらしながら、僕の方へと近付いてきた。
「それ以上寄らないでくれ。僕は大丈夫だ」
「……あんまり僕には大丈夫そうに思えないんですけど……」
 僕はその言葉に、厄介な人間に見つかってしまったものだと溜息を吐いた。所謂お節介というやつだ。
「放っておいてくれないか。一人になりたい時って、あるだろ?」
 近寄ろうとしたその男を引き離すため、僕は最もな理由をつけて目の前に迫る男に言葉を投げつけた。小柄な男はぴくりと体を揺らし、僕の言葉の真偽を確かめるみたいに見つめてくる。
 大きな瞳の男だった。身長は155センチと言った所だろうか。どう見ても子供だ。僕は顔を顰めた。
「……君、ここの職員?」
「はいっ、勿論! じゃないとこんな時間までここにはいないと思いますよ」
 最もな言葉ではあるが、それにしたって子供が起きていて良い時間ではない。僕は小さく息を吐いた。
「……門限はいいの?」
 僕が呟くと、「あっ!」と声をあげた子供が時計を確認する。どうやら、不味い時間帯だったようだ。傍目にもわかる程に焦り始めたかと思えば「行かなくちゃ!」と誰に言うでもなく呟いて去ろうとする。
 それでいいと僕がほっと安堵の吐息を漏らしたのもつかの間、
「あの、すいません。僕、今こんなものしか持ってないんですけど」
 もしよければ。と、照れたように呟いた男が、少し離れた場所に何かの包みを置く。
「さっき作った試作品のクッキーです。疲れを癒すクリームシュガーが入っているので、良ければどうぞ」
「人の作ったものなんか、食べない」
「お兄さん、酷い顔してますよ? 甘いものは疲れに効くんです。これ、結構自信作なので! あ、でも、僕が後で自分で食べようと思ってたやつなので、包装はぐちゃぐちゃですけど……」
 どうやら、人の話を聞かない子らしい。その慌ただしい子供は、すぐに「それじゃあ!」と言うと、ばたばたと僕が引き留める間もなく暗闇の向こう側へと消えた。
 僕は少し離れた場所に置かれたそれを見る。妖しい電磁波は見えない。そもそもここはIGOの管轄であり、その中でも更に限られた人間しか入れない場所だ。
 あの子供も、僕らと同じように特殊な訓練をされているのだろうか。
 僕は頭を振る。そんなことはどうでもいいことだった。
 僕はゆっくりと立ち上がると、子供の置いていったそれを拾い上げる。包みは確かに、あの子供の言うようにぐちゃぐちゃだった。
「……変な子」
 僕はそれを持って、ためつすがめつ眺めてみた。近くで見ても、悪い電磁波はなさそうだ。ならば、クッキーを食べるかは気分次第といった所でいいだろう。それに、どうせ毒を盛られた所で、僕には効かないのだ。
「…………忌々しい」
 自身の体質に悪態をつき、僕はふらふらと歩きだした。
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