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波が来た

狐ココ×仔狸小松君のお話

短い話で2,3話で終わる筈!w

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 茂みの中から、何かが覗いていた。小さなそれはもふもふとした毛をぱたぱたと左右に揺らす。
 はて、この物体はいつもの僕の散歩道にはなかった筈だが。
 僕はしばしそれを見下ろして考える。足先で突けば、ぴくんと動いたそれがまたむずがるように動き始める。
「君、邪魔なんだけど」
 僕の言葉に、その毛玉は萎れたように力を失う。ちょっと傷ついたのだろうか。
 僕はまた足先で突く。「ぴゃっ」と言う声が聞こえて、それが何かの尻尾だということに気がついた。
「誰?」
 僕が森を歩く時は、何人も僕の前を遮ることなどしない。それくらい、僕は恐れられている。人里に出れば、まあ、化け狐とか言われるだろう、そんな妖のような存在だから。
「にゃあ!」
 僕はむんずと尻尾を掴んで、それを引きあげて見る。「ひゃあ!」と、いう声の後に、がさがさと茂みの中から現れたのは、小さな小さな、見知らぬ子供だった。
「……狸?」
「狐!」
 ぱちくりと大きな目が僕を見つめる。僕は狸の言葉に、むっと眉間に皺を寄せた。
「そこら辺の獣と同一視しないでくれないか、僕にはココって名前がある」
「それを言うなら僕だって! 小松って言う名前がありますーっ!」
 キーッと、小松と言うらしい仔狸はぷらぷらと手を振った。なんとも抵抗らしくない抵抗である。
「……ふーん。で、君はここで何をしているの?」
「し、死んだフリしてました!」
 は? 僕は眉間に更に皺を寄せる。言っていることの意味がわからない。
「なんで?」
「だ、だってココさん、僕のこと食べるつもりでしょう?」
 僕は「ふむ」と、その仔狸を見つめた。顔は泥まみれだし、服も尻尾もなんというか、小汚い。
「まあ、まずはお風呂だね」
 ぴゃっと仔狸が怯えたような声をあげた。本当に子供らしい、素直な驚き方だった。残念ながら僕は、そこまで飢えているわけではないのだけど。
 だけど僕は気付かなかった。
 その悲鳴が、決して食べられることへの恐怖などではなかったことに。
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