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「凄いじゃないですかココさん! この仕事もう終わっちゃったんですか!?」
「あぁ、えぇ。意外と簡単に出来ましたよ、先輩。先輩が悩んでいたこの数式なんですけど、この関数とこの関数を組み合わせたら案外簡単に数式が組めましたよ」
パソコンの画面を見つめ、凄いと目を輝かせる先輩に淡々と説明する。小松先輩は頷きながら、僕の話をしっかりと聞いてくれている。分け隔てなく接してくれるその小さな手が、僕は入社した当初からの憧れで、大好きな存在だった。
「なるほど、確かにそれならいけますね。簡単なのに、全然思いつかなかったなー」
「あはは、頭が硬くなってしまっていたんでしょうね。僕もこれには随分苦労しましたよ」
照れたように頬を掻くと、小松先輩はどきりとするほど優しく、柔らかな笑みを浮かべて僕を見つめていた。僕はちらりと辺りを見渡す。フロアには人がいない。朝、一番にくる先輩に合わせて出社しているお陰で、僕らは今、ここに二人きりだった。
「……ねえ、先輩」
夜を思わせる声で、僕はプライベートでそうしている口調で君に話し掛ける。びくりと、彼の体が揺れた。
「……ご褒美、頂戴?」
唇に手を宛て、僕は褒美を強請る。小松先輩がさっと辺りを見渡した。
「誰もいないですよ」
会社では良き後輩、プライベートではちょっと意地悪で、優しい彼氏。小松先輩が嫌がるだろうから、僕は会社とプライベートで二つの顔を使い分けていた。その変化に、君が戸惑ったり恥じらったりする様はとても愛らしく僕の目に見えた。
だけど実際、戸惑ったりするのはどちらかといえば僕の事のが多いように思う。先輩としての小松先輩も、恋人としての小松先輩も、どちらも僕には可愛くて、思わず会社でも地が出てしまいそうなことがままあるものだから。
「ここ、会社ですよ!?」
「いいじゃない、スリルがあってさ?」
好きでしょ? と、問えば「馬鹿」と、頬を赤らめた小松先輩が視線を逸らす。この先輩という呼び名も、出来れば止めたいものなのだけれども。
「ほら、躊躇えば躊躇う程、人が来てしまうかもしれないよ?」
僕の言葉に小松先輩はぐっと言葉を飲み込んだ。「後で」と言い掛けたその唇を人差し指で塞ぎ、僕はにこりと微笑んだ。先輩は僕の駄目だしに更に眉根を困ったように寄せると、僕の手を払い退ける。
「……目、閉じて下さい」
椅子に座ったままの僕と、彼の身長はちょうど同じくらいだ。先輩の手が肩に乗せられて、僕は期待に胸を高鳴らせながら、ゆっくりと目を閉じた。
それから、ちゅ、と可愛らしい音を立てて唇が頬に触れる。僕が目を開くと、可愛らしい小さな顔がふるふると睫毛を震わせながら僕の頬に口付けていた。僕は不貞腐れたようにむっと小松先輩の体を抱きしめ、その頤を掴んだ。
「ココさ……!」
「普通、ご褒美は唇じゃない?」
焦らしてる? そう言って口付けようとすれば、先輩は頬を真っ赤にさせて僕の唇を手で塞ぐことで逃れた。
「だ、だめっ! かえっ、帰ったら!!」
「……仕方ないなあ。じゃあ、色んな所にキスしてくれるっていうなら、いいよ?」
色んな所? 先輩は首を傾げる。けれどそれと同時に、廊下を歩く音が微かに聞こえて、先輩はやや涙目になりながら僕を見上げた。
「ココさん! 人が!」
「僕はばれたって構わないもの。離してあげてもいいけど、返事は?」
「なんでもしますから! だから、離して下さい!」
「離したくないけど……仕方ないね。いいよ、良い返事が聞けたからね」
僕はくつりと笑って、小松先輩の額に口付ける。今日は夜が楽しみだと、僕の笑みに小松先輩がぞくりと体を震わせたのは、あえて見ないフリをすることにした。
「あぁ、えぇ。意外と簡単に出来ましたよ、先輩。先輩が悩んでいたこの数式なんですけど、この関数とこの関数を組み合わせたら案外簡単に数式が組めましたよ」
パソコンの画面を見つめ、凄いと目を輝かせる先輩に淡々と説明する。小松先輩は頷きながら、僕の話をしっかりと聞いてくれている。分け隔てなく接してくれるその小さな手が、僕は入社した当初からの憧れで、大好きな存在だった。
「なるほど、確かにそれならいけますね。簡単なのに、全然思いつかなかったなー」
「あはは、頭が硬くなってしまっていたんでしょうね。僕もこれには随分苦労しましたよ」
照れたように頬を掻くと、小松先輩はどきりとするほど優しく、柔らかな笑みを浮かべて僕を見つめていた。僕はちらりと辺りを見渡す。フロアには人がいない。朝、一番にくる先輩に合わせて出社しているお陰で、僕らは今、ここに二人きりだった。
「……ねえ、先輩」
夜を思わせる声で、僕はプライベートでそうしている口調で君に話し掛ける。びくりと、彼の体が揺れた。
「……ご褒美、頂戴?」
唇に手を宛て、僕は褒美を強請る。小松先輩がさっと辺りを見渡した。
「誰もいないですよ」
会社では良き後輩、プライベートではちょっと意地悪で、優しい彼氏。小松先輩が嫌がるだろうから、僕は会社とプライベートで二つの顔を使い分けていた。その変化に、君が戸惑ったり恥じらったりする様はとても愛らしく僕の目に見えた。
だけど実際、戸惑ったりするのはどちらかといえば僕の事のが多いように思う。先輩としての小松先輩も、恋人としての小松先輩も、どちらも僕には可愛くて、思わず会社でも地が出てしまいそうなことがままあるものだから。
「ここ、会社ですよ!?」
「いいじゃない、スリルがあってさ?」
好きでしょ? と、問えば「馬鹿」と、頬を赤らめた小松先輩が視線を逸らす。この先輩という呼び名も、出来れば止めたいものなのだけれども。
「ほら、躊躇えば躊躇う程、人が来てしまうかもしれないよ?」
僕の言葉に小松先輩はぐっと言葉を飲み込んだ。「後で」と言い掛けたその唇を人差し指で塞ぎ、僕はにこりと微笑んだ。先輩は僕の駄目だしに更に眉根を困ったように寄せると、僕の手を払い退ける。
「……目、閉じて下さい」
椅子に座ったままの僕と、彼の身長はちょうど同じくらいだ。先輩の手が肩に乗せられて、僕は期待に胸を高鳴らせながら、ゆっくりと目を閉じた。
それから、ちゅ、と可愛らしい音を立てて唇が頬に触れる。僕が目を開くと、可愛らしい小さな顔がふるふると睫毛を震わせながら僕の頬に口付けていた。僕は不貞腐れたようにむっと小松先輩の体を抱きしめ、その頤を掴んだ。
「ココさ……!」
「普通、ご褒美は唇じゃない?」
焦らしてる? そう言って口付けようとすれば、先輩は頬を真っ赤にさせて僕の唇を手で塞ぐことで逃れた。
「だ、だめっ! かえっ、帰ったら!!」
「……仕方ないなあ。じゃあ、色んな所にキスしてくれるっていうなら、いいよ?」
色んな所? 先輩は首を傾げる。けれどそれと同時に、廊下を歩く音が微かに聞こえて、先輩はやや涙目になりながら僕を見上げた。
「ココさん! 人が!」
「僕はばれたって構わないもの。離してあげてもいいけど、返事は?」
「なんでもしますから! だから、離して下さい!」
「離したくないけど……仕方ないね。いいよ、良い返事が聞けたからね」
僕はくつりと笑って、小松先輩の額に口付ける。今日は夜が楽しみだと、僕の笑みに小松先輩がぞくりと体を震わせたのは、あえて見ないフリをすることにした。
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