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※原作忠実パロではありません

※設定色々捏造中です。

苦手な方はご覧にならないようにして下さい。


今回ココさん不在です。すぐに出てきますけど!

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 朝早くに行ったら失礼なことに当たることを、小松は重々承知している。心地良い眠りを妨げられるのは誰しも嫌だろう。ただ、それでもなんとなく、小松はあの人の傍に行ってみたいと思った。そう思った彼の行動は早かった。

 そろそろと宮殿を抜け出し、小松はそろりと既に行き慣れた天幕に近付いた。そっと耳をそばだてたが、中からは何の音も聞こえなかった。
 辺りに人の気配はない。かがり火がいたる所にあるお陰で、まだ暗い朝方でも小松は一人で歩いてここまで来ることが出来た。
「トリコとココ、ですか?」
 後ろに控えていたメルクが声を掛けてきた。びくりと振り返ると、呼んで参りましょうかと微笑んでくれる。すっかりメルクも、トリコとココには慣れたようだ。あまり人と接することのないメルクのそんな僅かな変化が、小松は嬉しかった。
「眠っていらしたらご迷惑だと思うので……」
「シェフが来たとあれば、あの二人は例え先程眠ったばかりだとしても飛び起きるに違いないと思うけど……」
 メルクがからかうように言った言葉に、小松は苦笑する。トリコもココも、小松が麒麟だからか、やや過保護になることがままあった。ココに至っては大丈夫だと言っても聞かない時がある。
「……いいんです。少し、気になっただけなので」
「何が気になったんだ?」
 ぱっと天幕の入り口が開き、ぬっと大男がゆったりと出てきた。どきり、と心臓が飛び跳ねるかと思った小松の体が、ふわりと宙に浮いた。
「ふあ?!」
 トリコは小松の悲鳴にも似た声に、けたけたと笑う。小松を両手で頭上へと抱き上げたトリコの顔が下に見えて、小松は不意に違和感を覚えた。
「あ? どうした?」
 トリコも小松の様子に、首を傾げる。答えあぐねつつも、小松はその違和感の元を探してトリコをじっと見下ろした。違和感には、すぐに思い当たることができた。トリコが、鎧を着ていたのだ。
「……今日は鎧を着ているんですね。どこかに、行かれるんですか?」
 まさか帰るのだろうか。それは寂しいし、嫌だな。と、小松は僅かに唇を引き結ぶ。トリコが「あぁ」と、小松の言葉に納得したように声をあげた。
「ちょっと狩りに行こうかと思ってな」
「えっ……あの、狩りにいくんですか!?」
「おう、昨日肉を食いすぎてココに怒られちまってさー」
 ハハハ、とトリコが笑った。小松はきょとんとした風にトリコを見下ろしている。
「そうだ、お前に見せたいもんがあるんだ」
 トリコは言いながら、小松を地面へと降ろした。首を傾げた小松に笑い、トリコは傍らにあった鞍を抱えると歩き出した。小松がひょこひょことトリコの後をついていくと、大きな天幕の前でトリコが立ち止まった。トリコは振り返ると、意地悪そうににやりと小松に笑って見せる。
「お前は見たことあるか? 騎獣」
 騎獣。小松は口の中で呟いた。人を乗せるように躾けられた、妖魔のことだ。話にだけは聞いたことがあるが、見たことはない。小松は素直に首を横に振った。
「……いえ、見たことは、ないです」
「なら、俺の騎獣を見せてやる」
 ニッとトリコが道を開けた。その先にいた獣に、小松は思わず声をあげていた。
「うわあ……すごい!」
 駆け寄った小松の後をゆったりと追いかけながら、トリコがやや自慢気に小松の横に立った。
「犀犬っていう種類の妖獣なんだ」
「……へえ。触っても、大丈夫ですか?」
 トリコの手が犀犬に触れた。嬉しそうに瞳を閉じるその仕草がとても可愛らしく目に映り、小松も思わず微笑んだ。ふわふわとした毛並みは、とても気持ち良さそうだ。
「小松なら大丈夫だろ。な?」
 その狼のような生き物は小さく喉を鳴らすと、ゆっくりとその体を地面に伏せた。小松が触り易いようにしてくれたらしい。
 そろり、と手を伸ばした。恐る恐るといった小松に笑ったトリコが、小松の後で彼に気付かれないようにそっと屈みこんだ。
「わっ!!」
「ふにゃああ!?」
 触れるか触れないかの間際、トリコは大声をあげる。驚きのあまりにへんてこな叫び声をあげて尻もちをついた小松を見て、トリコは豪快にけたけたと笑った。目に涙まで浮かべているその姿に、小松はむっとしてトリコを睨みあげる。
「な、何してくれるんですかああ! びっくりしたじゃないですか、全くもう!!」
「ははっ、悪ぃ悪ぃ! お前があんまりにもびびってるからよ~」
「仕方ないじゃないですか! だって、こんなに大きいんですよ!?」
 子犬のようにきゃんきゃんと騒ぐ小松の言葉を聞きながら、トリコは相変わらず笑っている。ふと、トリコが騒ぐ小松の手を掴み、その小さな手をゆっくりとふかふかの毛並みの元へと導いた。騒いでいた小松が、緊張のあまりか一瞬静かになる。
 小松の手が触ったそこは見た目通り、気持ちが良かった。感動した小松がトリコの手が離れた後もゆっくりと優しく撫でてやると、その騎獣は瞳を閉じて、大きな頭を小松の掌へと押しつけてくる。
 ともすれば一口で小松が丸飲みされそうな大きな口ではあったけれど、小松がそれを怖いと思うことはなかった。
「気に入ったか? 後でテリーに乗っけてやるからな」
「テリー?」
 小松がトリコを見上げると、トリコは力強く頷いた。
「あぁ、こいつの名前だ。な、テリー?」
 トリコの呼びかけに、狼が尻尾を揺らして一声鳴いた。小松はふわりと静かに微笑んで、じいと見つめてくるテリーの視線に、自分の視線を重ね合わせた。
「そっか! 宜しくね、テリー」
 狼の尻尾が揺れる。また一声鳴いて、テリーは小松の頬をべろりと舐め上げた。





犀犬→さいけん と、呼びます。中国の妖怪?なのかな。中国だとシーチュエンと呼ぶみたいです。
巨大な犬の妖怪で、これを捕まえて上手く育てると家が繁栄するらしいです。
凄くテリーっぽい!w

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