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※原作忠実パロではありません

※設定色々捏造中です。

苦手な方はご覧にならないようにして下さい。


ココさんと小松君の溝

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「僕も狩りに、ご一緒させて貰っても構わないでしょうか?」
 難しい顔をしているココとトリコを、小松は見上げる。
「小松君、狩りは危険だよ。そのことはわかっているかい?」
「わかってます! 確かに役に立たないかもしれませんけど、生きている食材を見てみたくって……!」
 どこか興奮したように言う小松に、ココは小さく溜息を吐いた。小松が目を輝かせるのは、ココの目にとても可愛らしく映る。初めてのこと、好きなこと、好きな食べもののこと、小松は色んなことに興味を持ち、食べ、いつも嬉しそうにそこにいる。その姿を見るのを、ココはいつも楽しみにしていた。
 だから、出来れば自分だって連れてってやりたい。だけど……
 そんなココの思考を中断するように、ココの背中をトリコが叩いた。
「いいじゃねえか、思い立ったが吉日ってな。小松が行きたいって言ってんだから、連れてってやろうぜ、そう体験出来ることでもねえだろ」
「なんでお前はそう楽天的なんだ……小松君は、戴国の麒麟でもあるんだぞ!」
 何かあったらどうするんだ! と、ココは言う。小松はココのこういう言葉に、時たま溝を感じることがあった。打ち解けたつもりでも、小松が触れようとすれば離れていくような、そんな気がしてしまう。
 小松はぐっと唇を噛んだ。ココを困らせるのは、小松の本位ではない。
「……わがまま、でしたね。ごめんなさい、迷惑……ですよね」
 小松は深く項垂れる。衣服を掴み、悲しげに俯いた小松を見て、ココは慌てて小松の前に屈みこむ。
「違う! 迷惑じゃないよ」
「だって、ココさん、困ってるでしょう?」
 ココの声に、小松が僅かに顔をあげた。僅かに潤んだ目が、室内の明かりに照らされてゆらゆらと揺らめいているように見える。
「……それは君が、とても大事だからだよ」
「それって……僕が麒麟だから、ですか?」
 麒麟だから。
 ココは一瞬、小松のその問いにどう答えるべきか悩んだ。けれど、その言葉に間違いがあるようにも思えず、ココは厳かに頷いて見せた。
「君は今、この国にとって、とても大事な存在だから……」
 そこまで答えて、ココは小松の目に、悲しげな色が浮かんでいるのを見た。その目に涙が浮かぶかと思いきや、小松は目を瞬いてそれを堪えたようだ。その姿に、ココの胸が痛む。
「おい、ココ!」
 トリコの言葉に、ココは小さく息を吐いた。悲しませるのも、泣かせるのも本位ではない。
「女仙が許可したら、一緒に行こう。ただ、何かあったら大変だから、僕も行くよ」
「え?」
 小松がふと顔をあげた。ココは笑って、その小さな頭を撫でてやる。
「思い立ったが吉日、なんだろう? それに小松君は料理人でもあるから、生きている食材を見るのは悪いことじゃないと思う」
 ココの言葉に、トリコは遅れて到着した小松のお付の女仙へと視線を向けた。女仙は少し困惑したような素振りながらも、トリコの視線に渋々といった風に頷いて見せた。
「仕方がありませんね。泰麒のおねだりも滅多にあるものではございませんし……ただし、くれぐれもお怪我などなさいませんよう。ココ殿も、トリコ殿も、くれぐれも公に傷一つなくお帰し下さるとお約束下さい」
「あぁ、責任を持ってお帰しすることを約束する」
 ココの言葉に、女仙の目が僅かに鋭い色を帯びる。初めてみる色に、小松が僅かにたじろいだ。前で屈みこんでくれていたココの衣服の裾を掴み、小松はココの背中に隠れるように身を寄せた。
「こちらから条件がります。お見受けした所、貴方がたはお二人で狩りに行かれるよう。貴方がただけで公をお守りすることが、果たして出来るのでしょうか? 公の安全を第一にお考え下さいませ。もしも御身に何かがあっては困ります」
「……ちょ、ちょっと待って下さい!」
 いつもの物腰とは明らかに違う、その女仙の言葉に小松は慌てて声をかける。それを引き止めるかのように肩にぽんと置かれた手は、トリコの大きな手だった。
「わかっている。公の御身に何かがあれば一大事。それこそ戴の麒麟である公の御身を、戴の国民以上に心配する者があるとお思いか? 女仙の方々は少し、奢りが見えるようにお見受けする」
 トリコの顔からは表情が消え、珍しく声は低く、まるで威嚇するように女仙へと向けられていた。女仙も女仙で、その視線を真っ向から受けながらもたじろぐことはなかった。
 何も出来ない小松は、ひたすらはらはらとその成り行きを見守るしかない。
 女仙とトリコは暫く睨み合っていたが、やがてそれに根負けしたのは女仙の方だった。一礼をすると、どこか困ったような表情で告げる。
「……お任せいたしましょう」
「しかと承った」
 そのまま踵を返した女仙を見やると、ココは大きく溜息をついた。
「威嚇まではやり過ぎだろう、トリコ」
「悪いな! ちょっとムッときちまった」
 ココは再び溜息を吐く。ふと不安気な小松に気付いたココは、まるで小松を勇気付けるかのよう微笑んだ。
「……大丈夫だよ。君は僕らが絶対に守るから」
 ココの言葉に、そういうことじゃないと小松は首を振りたかった。けれど立ち上がったココの背中は、近くにいるのにどこか遠くに感じてしまう。小松は二人に気付かれないように俯くと、静かに言い掛けた言葉を呑み込んだ。
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