忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

触発されて書いてみる。
下手したらそのままコンテンツインしそうな勢いのトリコの勢いが恐ろしい。
ココマ大好きです!
アニメのココさんの小松大好きっぷりが半端ねえ。

この後にあるSSは二人とも付き合ってる設定でどうぞー。

拍手


ある日のインタビュアーがこう聞いた。
――料理の秘訣はズバリ、なんでしょう?
と。

当然それを聞いて、それだけで完璧に料理をマスターする人はいないだろうし、料理の腕前やコツというものは個人個人のやり方などもあるだろうから、一概にそれで料理がずば抜けて上手くなるなんことはまずない。あくまで料理が上手くなるかもしれない材料の一つに過ぎない。
そもそも自分だってまだまだ半人前の料理人だ、と小松は常々思う。上には当然上がいる。
しかし、やはりそれは日々の努力の賜物で、日々の積み重ねでもあるのかもしれないな、と小松は窓辺から夜空を見上げながら思ったのはもう随分と前のことだった。

5つ星ホテルから6つ星ホテルへと昇格したホテル、センチュリースープを完成させた料理人。
その"名声"に人々が群がってくる。
様々なマスコミが、スポンサーが、グルメ投資家が、色々な商談を小松に持ちかけてくる。
そして、それは連日の激務へと繋がってくる。
はっきり言って、小松は疲れていた。
曖昧な笑みで誤魔化しながらやんわりと断り、それでもしつこければきっちりと断る。
元よりセンチュリースープのレシピを公開するつもりもない。
それを知るや否や、罵声を浴びせてくる人間もいた始末だ。
「帰らなきゃ」
呟いた言葉は、誰に呟いたものでもなく、もう既に人気のない従業員室に虚しく響くだけだった。
呟かなければ、体が動きそうにもなかったから。
明日は休みだ。今日帰って寝て、明日休めばこの落ち込んだような気持ちも戻るだろう。
けれど体は、まるで重しでもつけたように動かない。
「ユン!」
重い腰をやっとの思いであげようとした時に聞こえた声に、小松は腰をあげた。
「ごめんね、今から帰っ……ッ!?」
「やあ、お疲れ様」
振り返った小松が瞳を見開く。
ウォールペンギンがうっとりとした顔をしていた。
軽いとは言えないそのペンギンを難なく片腕で抱えているのは、紛れもない四天王の一人、
「コ、ココさんっ!?」
「あんまりにも遅いから、心配してきてみたんだけど…」
「え? なんか約束していましたっけ?! ごめんなさいっ、僕…!!」
「いや、何も約束はしていなかったよ。今日は仕事でこっちに来ていたから、たまにはここで食事もいいかなと思ってね」
「えええ!? いらしてたんですか?! 言ってくれれば顔を出したのに…」
しょげる小松に、ココがくすりと笑みを漏らした。ウォールペンギンを床に降ろしてやれば、ぺたぺたとした足取りでしょげる小松の足にすり寄って行く。
「忙しそうだったからね。今日も美味しかったよ、ご馳走様」
「ありがとうございます」
ココの言葉に、小松の顔が嬉しそうに綻んだ。
「所で、君はこの後予定は何かある?」
「…いえ、流石にもうありませんよ」
「そう。それじゃあ、君も疲れてるみたいだし、今日は僕もこのホテルに部屋を取ってるんだけど、くるかい? 良い茶葉もあるよ」
ココの言葉に、小松が驚いたようにココを見上げた。
「いや、流石にそれは…時間的にもちょっと遅すぎますし!!」
「都合が悪ければ誘わないよ。退屈してたから、話し相手がほしくてね。勿論、小松君が良ければの話だけど」
「……えと、それじゃあ、お言葉に甘えちゃいます」
はにかむ小松に、ココがにこりと笑みを返した。
(………やっぱり、格好いいよなあ)
その笑顔を見ながら、小松はぼんやりと思う。
街を歩けば百人が百人振り返るような容姿だ。目立つが故に、彼も困ってはいるらしいが。

流石にウォールペンギンは小松の家でお留守番をすることになってしまったが、ペンギンは心得たとばかりに自分の寝床で丸くなっていた。
「別に連れてきても良かったんだよ?」
ホテルの部屋に戻ると、ココに促されてソファに座った小松に、お茶を淹れながらココが言った。
「あいつ、落ち着きがないから、ゆっくり話なんて出来なくなりますよ?」
「ふふ、小松君みたいだね?」
「酷いですよ、ココさん!」
そんな和やかな会話を交わしている家に、二人の間の会話は少なくなってくる。
静かな部屋にお茶の良い香りが漂っている。
時刻は既に深夜を回っていた。出されたお茶を啜り、小松はほうと吐息を漏らした。
「美味しいです! 柔らかい口当たりですね、香りもとても良いです」
流石です、ココさん! と、笑みを浮かべる小松に、ココは眩しそうに瞳を細めた。
「料理長のお眼鏡にかなったようで安心したよ。ある人の言葉を参考にした甲斐があったかな?」
「どんな言葉ですか?」
「料理は、"美味しいと食べてくれる人の笑顔を思い浮かべながら作る"ことが大切なんだってさ」
「……へえ、それ、素敵ですね」
少し、妬ける。小松は料理人の端くれでもある。
だから、他の料理人の言葉がココの口から出てくるのに、少しだけ嫉妬を覚えた。
「覚えてない?」
「…うん?」
ココがその小松の反応に、困ったような笑みを浮かべている。
首を傾げる小松に、ココはまた言葉を重ねた。
「君のインタビューが載っている雑誌を見たんだ」
「…うわ、本当ですか? どの雑誌だろう…」
「月刊グルメ情報誌、だったかな」
何かの確認作業のようなそれに、小松は益々首を傾げるばかりだ。
「……んー。あんまり覚えていません」
「君はもうすっかり有名人だものね」
四天王ほどではありませんと思いながらも、ココにそれを言ってもどうせ上手く言いくるめられるだけだと知っている小松は、敢えて何も言わずに茶を啜った。
「料理の秘訣はなんですかって質問があってね」
「あ? あー……って、もしかしてそれっ!!」
小松の大きな瞳が更に見開かれる。その瞳に映ったココが、にっこりと笑った。
意地の悪そうな笑みだった。
「美味しいと食べてくれる人の笑顔を思い浮かべながら作ることが大切」
「…うっ、意地が悪いですよ、ココさん!」
「そう? 君らしくていいと思うよ。僕は好きだな、この言葉」
ベッドに腰掛ける小松の横に移動したココが小松からカップを取り上げて、ベッドサイドにあるテーブルの上に置いた。小松を抱き寄せて膝の上に乗せると、小松から恥ずかしそうに身動ぎした。
「……ココさんに作る時は、そんなこと思ってませんけどね」
小松は何かを考えた後、小さく呟いた。
今度は驚いたのはココの方で、小松の顔を覗きこんでは首を傾げる。
「どういう意味?」
「……ココさんに食べて貰うものは、ココさんのためだけに作りますから」
だから、あの秘訣は効かないのだと小松は言う。
思わぬ言葉に、ココの顔が柄にもなく赤く染まる。
「…ココさん? って、顔赤ッ!! 熱ですか? 体調悪いですか? ごめんなさい、僕…っ!!」
小松の言葉を忙しなく紡ぐ唇を、ココが塞いだ。
「本当に、君にはやられてばかりだね」
「……ココさん?」
柔らかなベッドに小松の体を優しく横たわらせると、その上にココが乗り上げて瞼に額にとキスを贈る。
「凄く、美味しそう」
にっこりと笑ったココに、小松は背筋を何かが伝っていく。
「あの、ココさん!!」
「僕のためだけに用意された料理だからね。美味しく頂くよ」
「ちょっ、そんな意味で言ったわけじゃないですっ!…ッ、まってくださ…っ!」
小松の抗議はやんわりと聞き流される。
その日、小松がホテルの部屋から出てくることはなかった。



料理って誰かのために作ると楽しいし美味しくなるような気がするよねというお話。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[48]  [47]  [46]  [45]  [44]  [43]  [42]  [41]  [40]  [39]  [38
忍者ブログ [PR]